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国木田花丸と幼馴染
自己ベストずら
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直ぐな瞳を曜さんはしていた。それを見てしまった俺は、曜さんの言うことに従うしかなかった。

 言われた通りに後ろを向く。



 すると、背中にピタッと温かい感触がした。それは何度も経験したことのある温もり――曜さんの背中。



「やっぱり。陽輝、また背伸びたでしょ?」

「そうっすか? 最近計ってないんで分からないです」

「うん、やっぱり伸びてるよ。成長期だねー、さすが男の子」

「あの、何なんですか?」


 いきなり身長を計りだした曜さんに俺は戸惑いを隠せない。この行動に一体何の意味があるのか理解できない。だけどその答えは、曜さんがすぐに教えてくれた。


「あのね。陽輝の身体は前に比べてかなり大きくなった。今は身体の成長に動きがついていけてないだけなんだよ。筋肉はついてきたけど、まだ身体に合っていないの」

「はあ……」



 話がイマイチよく見えない。

 曜さんは続ける。



「だけど、これからきちんとトレーニングして、水泳に必要な筋肉をしっかりとつけて。それで動きを掴んでいけば、陽輝は今よりもずっと速くなれる。このままずっと水泳を続けていれば、きっと凄い選手になれる。私が保証する」


「……」



 俺にそう説く曜さんの表情は真剣そのものだった。曜さんは本気で、俺のことをそう思っている。その想いは確かに伝わった。



「身体が大きいっていうのは、それだけでひとつの才能だよ。それは、私が手に入れることのできないものだから」


「曜さん……」



 真面目に語る曜さんの言葉が、まるで水のようにすんなりと俺の中に溶け込んでいく。



「だから……頑張れ、陽輝!」



 バシーンと、思いっきり背中を叩かれた。いや、背中を押してもらったと言ったほうがいいだろう。


 あれだけの言葉をかけてもらって、思いっきり背中を押されてしまっては。




 それに応えないわけにはいかない。





「――頑張ります!」





***



 背中を押してもらったあとはバスの時間が迫っていたので、曜さんとはその場で別れ、俺はマルとルビィの待つバス停へと向かっていた。

 だいぶ時間が押しているので、全力で走ってバス停を目指している。大会が終わったあとだというのに、また体力を使っている自分がおかしくて口から嘲笑が漏れ出した。

 走っている今、不思議と清々しい気持ちだった。ルビィにこれからも頑張れと言われ、曜さんにも頑張れと背中を押された。俺は今、確実に前に向かって走っている。


「ハルくん遅いずら! バスもうすぐ来ちゃうよ!」


 バス停にいるマルと
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