自己ベストずら
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が合った。
「榎本くん……! これからも……が、がんばルビィ!」
「おう! がんばルビィ!」
ルビィの思いっきり笑った顔はとても優しげで、俺はその言葉通りこれからも頑張ろうと思えた。
***
それからマルとルビィと、帰りは三人一緒に帰ろうという話になった。まだ帰りのバスまで時間があることを確認した俺は、マルとルビィに待っていてもらうことをお願いして、再び水泳場の入口をくぐった。
二人には忘れ物をしたと言って待ってもらっているのだが、それは嘘である。なぜそんな嘘をついて再び水泳場にやって来たのかというと。
自動ドアの入口を通って左に曲がってすぐのところに、その人がいることに気づいたからだった。
「お疲れっす」
「お疲れ。いいの、彼女を待たせて?」
「彼女じゃないっすよ。茶髪の子が俺の幼馴染で、赤髪の子が友達っす」
「へぇ、彼女じゃないんだ。あんなに仲よさそうだったのに」
「そうでした?」
「うん。陽輝、赤髪の可愛い子の頭撫でてたじゃん」
「ちょっ曜さん、そこ見てたんすか!? うわー恥ずかし……」
「えへへ……たまたま見えちゃったから」
ペロッと少しだけ舌を見せて曜さんは悪びれたように振る舞う。その仕草がやけに似合っているもんだから、俺はそれ以上なにも言い返そうとは考えなかった。
マルとルビィと話をしているとき、入口の向こうにチラリと曜さんの姿が見えたのだ。それから曜さんは入口から出てこなかったので、きっとまだ中にいるのだろうと思って俺はやって来たのだった。
「曜さん、優勝おめでとうございます」
今日は俺が出場した競泳と並行して、高飛び込みの大会も行われていた。そこで曜さんは見事優勝、全国大会へと駒を進めたのだ。
「ありがと。陽輝は……残念だったね」
「俺はいいっすよ。才能ないですし、水泳は趣味みたいなもんですから。大会は記念っすよ、記念」
その言葉は曜さんに向けてではなく、まるで自分に言い聞かせるように思えて仕方がなかった。負けた言い訳をしているようで、あまり気持ちのいいものではなかった。
「そうかな?」
「……え?」
だけど曜さんは、そんな俺を否定した。
「私は、陽輝に才能がないとは思わないけど」
「でも俺、予選落ちですよ?」
そんな曜さんの言葉を俺は否定する。まるで嘘で慰められているような気がして、自分がひどくみじめだ。
「陽輝」
「はい」
「ちょっと後ろ向いて?」
「何でですか……」
「いいから」
真剣な口調に真っ
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