修学旅行
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をまじまじと見ては、楽しそうに会話を繰り広げて歩みを進めている。そこに俺の入る余地はなく、俺は少し後ろを歩きながら彼女達を見守っている。
「ねえねえハルくん!」
俺のもとにマルがやって来て声をかけてきた。その後ろには黒澤がピタリとくっついている。未だに俺は黒澤と仲良くなることができず、極度の人見知りという彼女に今もこうして距離を取られている。
「どうした? 何かあったのか?」
「ううん。ハルくんはどこか行きたい場所ないのかなぁって」
「行きたい場所かぁ……」
自由行動の段取りを全く決めていなかった俺達は、このように行き当たりばったりな行動になっている。東京なら歩いていて目に付いた場所を訪ねればいいだろうという考えが浅はかだった。
「秋葉原、なんてどうだ?」
「アキバ!?」
俺の提案に食いついてきたのは、マルではなくて意外にも黒澤だった。マルの後ろに隠れていた顔はマルの肩越しに姿を見せて、目はキラキラと輝いている。
「ルビィ、アキバ行きたい!」
「それなら、アキバに行くか」
「うん!」
「ずらー!」
俺達は秋葉原へと向かって歩き出す。相変わらず俺の前をマルと黒澤が歩いていき、俺はその後ろを見守るようにして歩みを進めていた。
正直、秋葉原に黒澤が食いつくとは思わなかった。前を行く黒澤の足取りは、さっきまでと比べて心なしか弾んでいるに見える。よっぽど秋葉原に行きたかったのだろうか。なら行きたいと言えばいいとつい思ってしまうが、極度の人見知りだからそれも仕方のないことだった。
秋葉原にたどり着き、俺達は人混みの中をせっせと歩いていた。さすがはオタク街というだけあって人通りが多い。これだけ人が多くなるとマル達とはぐれてしまう可能性があるので、俺はさっきまでよりマル達に近づいて歩いていた。
先程と比べてマルと黒澤の口数が少なくなっている。顔色を伺うと少し疲れが見て取れる。どこか建物の中に入れないかと俺は周囲を見渡した。
「あっ、あそこに雑貨店があるぞ。人も少なそうだから一旦中に入って休憩しよう」
「ずら〜」
俺が先頭に立って進んでいき歩けるスペースをつくる。その後ろからマルと黒澤が歩いてきて、俺達はその店の中に入った。
「ふぅ、疲れたな」
「うん。疲れたずら……」
膝に手をつきながらマルは言う。額が少し汗ばんでいて、本当に疲れたみたいだ。
「あれ? 黒澤は?」
「ルビィちゃん? ほんとだ、いないずら」
近くに黒澤の姿がなかった。慌てて周囲を見渡すも見当たらない。途端に背中が寒くなってきた。
「あ、ルビィちゃんいたずら!」
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