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国木田花丸と幼馴染
プールサイドにて
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彰台までたどり着いたその大会が終わると、曜さんは受験勉強に専念すると言ってプールには顔を出さなくなった。

 曜さんほどの実力があれば特待生の話もいくつかあったらしい。しかし曜さんはそれらの話を全て断り『浦の星女学院』を受験することを選んだ。

 その選択に疑問を持った俺は、曜さんに直接その理由を聞いた。そのときに聞かされた曜さんの答えが意外だったことをよく覚えている。


『友達……幼馴染と同じ高校に行きたいから』


 少し顔を赤くして恥ずかしがりながらそう言った曜さん。俺とマルみたいな関係の友人が曜さんにもいるのだと、その時初めて知った。俺はそれ以上のことは詮索せず、曜さんの選択を尊重して応援することにしたのだ。


「よっし準備体操終わり! 今から飛び込んでくるから、しっかり見ててよ!」

「了解っす!」


 あっという間に準備体操を終わらせ、飛び込みプールの方へと向かう曜さん。飛び込み台へと上る階段を進んでいくと、曜さんは最も高い飛び込み台の先端に立った。その高さは10メートルもある。


「陽輝ー! ちゃんと見ててよー!」

「バッチリ見てますー!」


 気がつけば背中の痛みも消えてなくなっており、俺は立ち上がるとブンブンと手を振って曜さんに合図を送った。すると曜さんは膝を曲げて体勢を整えると――。


「ヨーソロー!」


 前逆宙返り三回半抱え型。曜さんの最も得意とする技を落下していくなか成功させる。水に向かって落ちていきながら技を完璧に成功させるその姿は、まるで妖精のように可憐であった。

 技が終わると曜さんは流れるように入水体勢へと移る。そして次の瞬間には、ほんの僅かに水しぶきを上げた。飛び込みにおいて、入水時の水しぶきは小さい方が良いとされているのだ。

 飛び込んだプールの水面から曜さんは顔を出し、ゴーグルを外して俺の方を見てきた。


「どうだったー!?」

「完璧でしたよ! さすが曜さんっす!」


 曜さんに聞こえるように大きく声を出して言う。プールサイドへと泳いで向かう曜さんのもとへ歩み寄っていくと、曜さんは満足そうな笑顔を見せていた。


「ありがと。私はしばらく飛び込みしていたいから、陽輝も自分の練習頑張ってね!」

「うっす、頑張ります!」


 そう言うと曜さんは再び飛び込み台の方へと歩き出していった。その背中を見送ると、俺も自分の練習へと移ることにした。曜さんと違って俺は競泳、今取り組んでいるのは背泳ぎの100メートルである。

 俺は今日ここに来てようやく、飛び込みプールの横に設けてある競泳プールに入ることができた。背泳ぎの練習をしていると、目に映るのは大きなドーム屋根。変わりばえのしない景色を眺めなが
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