シーホーク騒乱 4
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斬れるなぁ」
秋芳はウェンディからあずかった小剣をかかげ見て、感心する。
鉄の鎧をなんども断ち斬ったにもかかわらず、刃こぼれひとつ生じていない。
小剣――ショートソードといってもことさら小さいわけでも短いわけでもない。あくまで騎兵用の長剣に対して歩兵用の小剣という呼称がついているだけで、刀身の長さは七〇センチほど。日本刀とくらべても遜色はない。
「当然ですわ。なにせ古代遺跡から発見された正真正銘の魔導遺物(アーティファクト)ですもの」
「軽量化だけでなく攻撃力を上げる利刃や折れず曲がらずの不壊の魔力が込められているな」
秋芳は見鬼によって魔剣の性能を把握している。
「そのとおりですわ。霊素皮膜処理(エテリオ・コーティング)が施されていますの」
霊素皮膜処理。
存在が完全に固定され、物理的・魔術的な変化や破壊を完全に受けつけない古代人の古代魔術のなせる業。
近代の魔術師にはどんな理論でどうやったのか、まったく理解も再現も不能な古代人の魔法技術のひとつだ。
「無銘ですがわたくしでさえ鉄を泥のように斬ることのできる魔剣ですわ。ぞんぶんに振るってリビングアーマーたちを一体残らず鉄屑にしてくださいまし」
「まるで青虹の剣だな。せっかくの宝剣を奪われないよう、敵に趙子龍がいないことを祈るよ」
雲地区、高潮地区を抜け、潮風地区に近づくにつれてそこかしこに鎧の残骸を目にするようになる。街の警備官たちの働きによるものだろう。だが彼らも無事ではなかった。
破壊されたリビングアーマーの数以上の負傷者を出し、最悪命を落とした者もいる。
警備官らの帯びるサーベルでは金属鎧に有効なダメージを与えられず、不利な戦いを強いられたからだ。
機転を利かせて武具屋から臨時徴収した戦鎚や戦棍で応戦したり、銃士隊による銃撃や魔導士の魔術によりなんとか引潮地区への侵入を防いでいた。
シーホーク潮風地区。
花の匂い、香煙の匂い、果物や野菜の匂い、強い香辛料の匂い、揚げ菓子の甘い匂い、炭火が焼ける匂い、牛や犬、羊や山羊、鶏の匂い、人の匂い、土の匂い、木の匂い、水の匂い――。
豊かで濃厚な匂いは活気の証拠。だがシーホーク潮風地区はいま、剣呑な血と硝煙の臭いに満ちていた。
「くそぅ、なんなんだやつらの動きは!」
警備官のひとりが思わず悲鳴に似た声をあげる。
街中を散発的に暴れていたリビングアーマーとちがい、引潮地区へと侵攻する鎧の一団は統制された動きをしており、迎撃が困難だったのだ。
こちらが攻めればおなじだけ退き、こちらが退けばおなじだけ攻めてくる。
理屈の上では一進一退になるはずだ。
だがなぜか警備官側
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