シーホーク騒乱 4
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げてあらぬ方向へと飛んでいってしまったり、あるいはかき消されてしまうからだ。
「魔法回避率、無効率ともに九〇パーセント超。計算通りだ。さぁ、次は魔法防御力について試させてくれ。んん? ……どうした、早く次を撃て。撃つんだ!」
必殺の魔術が通用しない鋼の巨人を前に呆然とする魔導士。もはや次の呪文が唱えられる状態ではなかった。
蒼白になって身をひるがえし、脱兎のごとく逃走する。
「敵に背を向けるとは、敗北主義者め。粛正だな。――鉄拳射出装置起動、アゴーニ!!」
ルイーツァリの腕の先が本体からはずれ、火箭と化して突き進み魔導士の上半身を吹き飛ばした。
腰だけを残した二本の足は数メトラほど走ると、もつれるようにしてたおれ、血と臓物をぶちまける。
射出した拳が【マジック・ロープ】によって自動的に腕に戻るのを見て満足げな笑みを浮かべるカルサコフ。
そこには無駄な血を流さないよう、【マインド・ブレイク】による精神的ダメージを負った女たちを治療して帰した数日前の面影はない。
血の臭いに興奮し、死と破壊に悦びを感じる狂人の姿しかなかった。
これが、カルサコフの、いや、天の智慧研究会と称するテロリストたち全員に共通する正体であった。
どのような正義やお題目や大義名分を掲げようが、暴力で世の中を変えようとする人間の性根など、しょせんはこのようなものだ。
そのテロリストの身体にかすかな振動が伝わってきた。
城壁の上に設置された複数の銃身を環状に束ねた火器――ガトリング砲から猛烈な勢いで鉄弾が発射され、リビングアーマーたちを蜂の巣にしていく。
その銃弾の嵐がカルサコフにも降りかかっているのだ。
「……ふぅむ、矢避け(ミサイル・プロテクション)は作動せず、か。やはり火器による銃撃はやっかいだ。これは改良の余地がある。だがこの防御力、これはすばらしい!」
ルイーツァリの表面にふたたびルーンが浮かび上がっている。魔術による攻撃を受けたときとはまた別の種類、物理的な打撃に対する盾のルーンが。
「ウーツ鋼への耐物理・耐魔術符呪。予想通り、いや予想以上の出来栄えだ!」
ウーツ鋼とは鋼の元素配列構造内に一定周期で炭素の層構造を配列することによって通常の鋼よりも圧倒的に優れた剛性と靭性を持たせた特殊鋼材だ。
帝国内でもウーツ鋼を工業的に生産できる鍛造技術者の数はとても少なく、年間生産量はごくわずかなため、錬金術による魔術的な手法での錬成法が研究されている。
だが錬成物の永続的な固定がむずかしく、配列構造の複雑怪奇さから錬成そのものにも時間がかかるという、実に希少な金属なのだ。
このスターリ・ルイーツァリは、そのウーツ鋼によって造られ、さらに各種の符呪がほどこされた魔鋼鉄のゴーレムなのだ。
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