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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 3
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 その日の朝、宋軍の物見櫓に立っていた兵士は仰天した。
 わずか一日で壊滅した元の船団は、おなじくわずか一日で復活していたからだ。
 斥候の話によるとクビライの十三番目の子である東安王メデフグイが十余万の兵と、泉州の豪商である蒲寿庚(ほじゅこう)から買い取った軍船を用意して援軍に来たという話だ。
 敵の海戦能力が落ちたすきを狙い、打って出るべきだ。いや追尾してくる船のないうちに崖山を離れ、安南や占城といった南の国々に逃れるべきだ。
 などと意見が割れ、軍議を重ねているうちに敵はその兵力を前よりも増やしてしまったのだ。
 安南とはベトナムの北に、占城とはベトナムの南にあった国で、昔から海路をへて中華との関係がある。

(こんなことなら手勢を率いて元の本陣を急襲するべきだった……)

 張世傑が内心でほぞを噛む。自分は千載一遇の好機を逃してしまったのかも知れない。たとえ軍礼違反になっても打って出るべきだったのではないか……。

早上好(おはようございます)、張将軍」
「おお、これは! 秋芳先生に京子先生、おはようございます」

 先生とは道士に対する失礼でない呼びかただ。最初は二人の実力を疑っていたが、風雨を招き自軍の渇きを潤し、敵軍に痛手をあたえたことで信用してくれたということが言葉使いからわかる。

「早々に出立なさるという話でしたが、まさかわざわざおわかれの挨拶をしに参られたので?」
「そのことですが……、実は玉皇大帝から宋朝を助けて元軍を退けろという啓示をさずかりまして。今しばらくこちらにお邪魔することをおゆるしください」
「それは助かります! ぜひお力をお貸しください」
「ではさっそくですがお手伝いさせてください。つきましては皇帝陛下にお目通りを願いたくぞんじます」
 そのいつになくかしこまったもの言いに横にいた京子が思わず吹き出す。
「ねぇ、その言いかたどうにかならない? なんからしくないわ」
「そうは言うが相手はお偉いさんで、なおかつ歴史上の人物だぞ。口調もあらたまるというものだ」
「そのうち舌噛むわよ。それにこの感じだとよっぽど変な言葉使いでもしない限りだいじょうぶだと思うんだけど」

 そう言って口と耳とを交互に指差す。
 この世界の住人の言葉は中国語のような言語として耳に入るのだが、頭には日本語として伝わってくるのだ。なんとも不思議な二か国語放送である。

「う〜ん、まぁ、そうだな。それに俺たちは俗世にうとい神仙様だし、少々の粗忽はゆるされるだろう。――だいたい言葉使いに厳しすぎる作品てのもつまらないよな」
「ううん?」
「中世ファンタジー風の異世界が舞台なのに『完璧』や『玉砕』といった中国発祥の故事成語が出てくるのはおかしい! てつっこむのは野暮だと思うんだよ」
「まぁ、そうよ
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