暁 〜小説投稿サイト〜
東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 3
[7/19]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
界のすべてまでにも。

「……京子、俺がいま行使している術はいわゆる禁呪に属する類のものだ。禁呪とは単に強力だったり倫理的に問題があるから禁止しているだけではない。では禁呪とはなにか? 以前読んだ雑誌、たしか月刊陰陽師だったかに載っていた小論に『禁呪とは世界の一部を担保にしておこなうゲーム。勝てばその見返りは大きいが負ければその負債は術者だけの負担にとどまらず、まるで無関係の人間まで巻き込む』と書いてあった。これはまぁ、正しいと思う」
「禁呪……」

 京子もそういう呪術が存在するのは知っている。かつて秋芳とともに禁呪指定されている犬神を使役する呪術者を相手にしたこともある。だが、そんなふうに考えたことなどなかった。強いから、危険だから禁止されているから使わない。ただそんな感じで禁止≠ウれている。漠然とそう思っていた。

「その論文によると、たとえゲームに勝ったとしても禁呪は最終的に我が身を滅ぼすんだそうだ。いうなれば毒だ。たとえ目に見えなくても、すぐにはわからなくても禁呪はそれを使用する者の身心を蝕んでゆく。だがその強大さゆえに使うのを止められない……」
「まるでギャンブルみたい」
「まさにそうだ」
「でも、だからってまったく手を出さないのもよくないわ。危険だからこそよく調べてみなくちゃ、いざってときに対処のしようがないじゃない。ようは力に飲み込まれなければいいのよ。研究に研究を重ねて、危険なところだけを取り除いて安全にあつかうべきよ」

 口で言うほど簡単なことではないのは京子も百も承知だ、だがそうやって人類は知識を積み重ね、技術をみがいて進歩してきたではないか。危険を恐れて行動しなければなにも変わらないどころか退歩してしまう。
 土御門夜光の残した成果をもとに発展した現代陰陽術は奥深く多様性に富むもので、霊災修祓のみならず幅広い分野での転用が可能だ。
 陰陽術の未来はほかのだれでもない、自分たちの手で切り開いてゆくのだ。
 京子のそんな意思が伝わってきた。

(実に前向きで向上心にあふれた答えだ。京子はほんとうに良くできた子だなぁ)

 ともに陰陽の道を歩む恋人の意気軒昂な言葉に、あやつる術におのずと身が入る。

「――それにあたしの如来眼だって禁呪みたいなものでしょ」
「まあな、危険度で言ったら特級クラスの禁呪に相当するだろうな。問答無用で封印されてもおかしくないレベルだ」

 仏眼仏母の相、如来眼。
 豎眼(じゅがん)や菩薩眼。龍眼とも呼ばれるそれは仏教においては菩薩の慈悲を体現する力とされ、道教においては龍脈の流れを見極め、あやつる力があるとされる。
 たとえ見鬼の才を持った陰陽師といえども龍脈の流れを見るというのは容易にできることではない。
見鬼というのは一種の霊感能力であり、かならずしも
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ