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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 3
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「ああ、そうだ。旧約聖書の神はエジプトに十の災いを起こしたが、俺たちは宋にたくさんの幸いをあたえよう」
「十の災いってたしかナイル川の水を血に変えたり雹を降らせたり疫病を流行らせたりしたのよね。神様のくせにえげつない呪詛よねぇ」
「洋の東西を問わず神様なんてそんなものだろう、日本(うち)の神様たちだって祟るのが基本だしな」
「それにしてもノアの大洪水とかソドムとゴモラを滅ぼしたりとかエジプトに災厄を起こしたりとかなにもしていないヨブさんにひどいことしたりとか、ちょっとやりすぎじゃない? ここまでくるともう霊災よ」
「まぁ、実際そうかもな。霊災が極まると神になる。て説は昔からある」
「ああ……、聞いたことがあるわ。フェーズ4にとどまらず、さらにその進行を深めて霊災の連鎖が極限にたっしたそのあとは霊災の根本である霊気の偏向が偏向でなくなる。局地的にその部分のみが世界に受け入れられてその存在が万物にみちる霊気のひとつの型として偏在化するってやつよね。つまり昔から神様とか仏様って呼ばれていた霊的存在は霊災の一種である。て考え」
「そうそう、フェーズ5。ファイナルフェーズとか言われてるやつだな」

 かつて神仏とされた対象の多くを汎式陰陽術では霊的災害としてひとくくりにしているが、御霊など人の魂に関わる部分は研究そのものを禁忌としていた。現代の呪術界では有効性を重視するため信仰の対象である神々や、倫理的な見地から検証の困難な魂などに手をつけず放置しているのだ。
 だが唯一この分野に踏み込んでいた例外的な部署も存在した。宮内庁御霊部というところだが、ここの最高責任者で十二神将の一人でもある大連寺至道が『上巳の大祓』と呼ばれる霊災テロを起こして死亡。御霊部もまた解体され、いまだ同様の研究部署は作られていない。

「本物の神様とか超強そうだよな、イナゴとかハエとか召喚して雹の嵐や大洪水を呼び起こして天から硫黄と火を降らし厄病を蔓延させる。とんでもない規模の霊災だぞ、これは。……チェーンソーでバラバラにできないよなぁ」
「チェーンソー?」

 現世利益を追求し、信心は二の次の道教が基盤にある呪禁と、信仰の部分をばっさり削除したことで成立しているこんにちの陰陽術を学ぶ二人は敬虔な一神教信者が聞けば激怒ものの会話をしてから床に就いた。





 乳白色をした濃霧のむこうから喚声や銅鑼を打ち鳴らす音がかすかに聞こえてくる。
 元軍が宋軍に攻撃をしかけているのだ。
 元の本陣では張弘範、張弘正、張珪、劉深、李恒、アリハイヤ、アタハイ、サト――ら諸将が顔をならべていたが、東安王メデフグイとその客分であるマニ教司祭、太上準天美麗貴永楽聖公方臘の姿はなかった。

「……張世傑に魚釣城の宋兵らのように三六年もねばられてはたまらぬ」


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