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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 3
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金行符をかまえた京子が柳眉を逆立てて一喝。
 秋芳は『ぶつよりやばいことしてるだろ!』などというツッコミも入れず、呪力の炎に炙られつつ、ほうほうのていで風呂場へと直行して冷や汗を流すことにした。

「まったく、もう……、ほんとうにエッチなんだから……」
 京子は気分を変えようと卓の上に置かれた本を手に取って見る。題名は『東京夢華録』。金に追われる前の北宋の首都である開封の繁栄ぶりを記録した回想録だ。街中の様子や文化や風習などがこまかく書かれていた。

「……千人以上も入れる劇場に百メートル以上もある仏塔。すごいわね、東寺の五重塔の約二倍じゃない」

 異なる時代の異なる国の都市の様子が書きつられており、たしかに興味深い。思わず読み入ってしまう。

「――なぁ、京子」
「…………」

 いつの間にか風呂から上がった秋芳が遠慮がちに声をかけてくるが京子は黙々と頁をめくり、それには答えない。

「なぁ、京子……怒ってる?」
「…………」
「京子っ、俺の言葉を聞いてくれ」
「…………」
「君が魅力的すぎるからついつい手と口がぶしつけなまねをしてしまうんだ。賢くて綺麗でかわいらしい女の子に密着されたら理性がすっとんで惑乱しちまう。さっきのが気に障ったんならあやまるよ。でも京子といると嬉しくて楽しくて自分でもわけのわからない状態になってしまうんだ、だから――」
「…………」
「――少女の純真さと大人の女性の色香が微妙に混じり合って、天上の人とも見まごうばかり。まさに女性美の化身。優雅で愛らしいエロティシズムを体現している。君がもつそんなエロティシズムに我を忘れて耽りたい」
「もう怒ってないわよ。それよりもちょっと来て」
「あ、ああ、なになに?」
「ここ、いろんな菜譜(メニュー)が羅列してあるけどどんな料理なの?」
「この蟹醸橙というのはカニの肉とみそを柚子の皮でくるんで蒸したもので、これは――」
「――ふぅん、それにしてもいろんな本があるわね。茶館のガイドブックまであるじゃない」
「なにせ最初に印刷技術が発明された国だしな」
「宋って文化レベルでいうなら江戸時代なみじゃないの?」
「長い平和で町人文化が栄えたところとか江戸時代と似ているかもな。そうそう落語に『まんじゅうこわい』てのがあるが、この話の元ネタってのが宋の時代に書かれた『避暑録話』という本の中の『畏饅頭』という話なんだ」
「へぇ〜、どれどれ――」

 肩を寄せ合って宋代の書物を読みふける。中国の古い文体で書かれており、常なら読むのは困難なはずなのだが、耳に入ってくる言葉と同様に文章も日本語に簡略化されるようで普通に読めた。

「――こんなに文化的な国が戦争で滅ぼされるなんて見てられない。ステージクリアとか関係なしに、絶対に助けてあげなくちゃ」
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