夜虎、翔ける! 1
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どんだ室内に新鮮な外気が風となって入ってきた。
「すみません。いくらノックしても返事がないものですから」
黒い外套を羽織り、左目に錦の眼帯を巻いた青年――土御門春虎がおだやかにあいさつをした。春虎に続いて早乙女凉が園長室に入り、こちらも吉良にむかってきちんとあいさつをする。
「臨時呪術講師早乙女涼とその助手にして転入生の堀川夜虎。ただいま到着」
「ああ――、早乙女君か。よく来てくれた。それに堀川君も、遠路はるばる疲れたろう。さっそく校内や寮を案内してあげたいところなんだが、見てのとおり取り込み中でね……」
臨時講師に転入正とはいったいなんのことか?
泰山府君祭によって現世に帰還をはたした夏目だったが、その術は不完全なものだった。春虎が施したある術で夏目に土御門の竜である北斗を憑かせることでかろうじて夏目の魂を現世につなぎ止めておくことができているが、あやうい状態だ。そのため春虎は夏目を完全に復活させる方法を探すため、あるモノを探している。
だが手がかりは乏しい。そのため春虎が周易をもって卜占したところ、この地に求めるモノがあるとの応えがでたのだ。それもこの真森学園の敷地内に。
春虎たちはこれまでにも幾度か陰陽庁の研究施設をなかば襲撃するように捜索していた。陰陽庁が春虎たちをテロリストあつかいする理由のひとつだ。
遺恨とまではいかないまでも陰陽庁には複雑な思いがある。少々強引な手段をとっても胸が痛むことはないが、一般の組織や施設が相手では話はべつだ。陰陽庁とは直接関係のない真森学園に強行手段はもちいたくはない。さらに春虎がくわしく卦を読んだところ。
――大過は棟撓む。往くところあるに利ろし。亨る。初六。藉くに白ボウを用う。咎なし。九五。枯楊華を生じ、老夫婦その士夫を得たり。咎もなく誉もなし――
という卦が読みとれた。これはひとことで言うなら『急がば回れ』という意味だ。
隠形してこっそり探る方法も検討されたがより腰を据えて調べられないか考えていると早乙女凉が突拍子もない提案をした。
臨時講師と転入生として潜入してじっくり調べる。というのが彼女のアイデアだった。
昨年末の陰陽法改正以降、一般の企業や学校にも陰陽師を派遣し、呪術について初歩的な教えをするという動きがあった。それに便乗して学園に潜り込もうというのだ。
「……ロゼッタ協会に所属するトレジャーハンターじゃあるまい、そんな簡単にいくんですか?」
「まかせてちょうだい、蛇の道は蛇よ」
ためしにまかせた結果、簡単に段取りをすませてしまった。
「マジかよ……」
「どう? 身分を隠して学園内に潜入調査。『スケバン刑事』みたいで燃えるでしょう」
「ええ、『九龍妖魔學園紀』みたいですね」
世代間の微妙な差を感じ
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