第一部
第1話「一人の少年」
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別に」
「それじゃあ。将来、進路とか何か悩みとか」
先程から先生が色々質問をしてくることに何か隠しているような気がした赤月は、先生に言った。
「先生」
「は、はい。何かな」
突然、呼ばれた彼女は少し動揺した。
「もしかして、こないだのことですか。もし、そうならもう大丈夫なので心配要りません」
「え、その、そうだけど。けど」
「あの、すいません」
「は、はい」
「僕のことを気にしてくれるのは有り難いですが、余りプライベートのことは触れないでくれませんか」
「あ、そ、そうよね。・・・ごめんなさいね」
少し落ち込んだ様な顔をした彼女を見た赤月は、
「僕は、今でも十分に学生生活を楽しんでいますから。もう大丈夫です」
そう言った。
「そ、そう。そうか。・・・ごめんね・・・時間を取られちゃって」
「いいえ、では、これで」
そう言って、カバンを背負った赤月は、ドアを開けて先生に向き直り、頭を軽く下げた。
「さようなら」
「えぇ、・・・さようなら」
彼女は、ただそれしか言えないまま、赤月は学校を出た。
彼の名は、赤月怜一(あかづき りょういち)。今年で、高校2年になる。
彼には、家族はいない。厳密に言えば、8年前までは居た。父親と母親、そして、4つ上の姉を含めた4人家族だった。そう、あの日までは。
先程、先生が相談しようとした内容は、これに関わる。今年の新学期の4月半ば、彼に家族が居ないことを新しくクラスになった生徒3人がそのことで彼を辛かったのだ。その事に、彼は余り気にも留めてはいなかったのだが、その態度に腹が立ったのか3人の内の1人が彼に嫌がらせをしようと彼にちょっかいをかけたのだ。その際、別に腹が立った訳ではないが、彼と軽い喧嘩になり、教員に見つかり問題となった。担任教師の白山本人は、その事を察知出来なかったことを気に病み、それ以来、2週間程に1、2回彼と面談するようになったのだ。
学校を出て徒歩30分程で、赤月は6階建てのマンションに入って行った。
彼は、今現在は一人暮らしだ。元々は県外から、この町の高校に入学をしてきた為、こちらに自宅は無論ないのだが、死んだ母親の兄である叔父が偶然にもこの町に住んで居た。それが、このマンションで部屋は、2LDKである。高校から登校する為に、叔父が入学時からここに住まわせてくれている。その叔父は、仕事で海外転勤が多く、入学してから直ぐに2年近く日本に居ない。故に、高校に入ってからは、ずっと一人でこの部屋を使っている。たまに、母方の祖父母が訪れたりする。また、この部屋の家賃から電気ガス水道の費用は全て叔父の講座から引き出しているので、とても助かっている。とはいえ、本人自信は無駄使いを控えている。その他の生活費は、両親の祖父祖母から仕送りをくれていて、大切に使って
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