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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 3
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の侵入はゆるしません」
「…………」

 ウェンディがなすべきことを考えている間にも剣戟や銃声といった剣呑な響きの音が聞こえてくる。ナーブレス邸に入り込んだリビングアーマーたちは秋芳とマスターソンの手で撃退したが、雲地区ではまだ戦闘がおこなわれているようだ。

「……この騒ぎはすぐ近く、トーランド卿のお屋敷からですわね」
「はい。しかし男爵様はいくさ上手として名を馳せたお方で、家中の方々も腕利きぞろい。屋敷も外敵に備えた造りですのでそう易々と賊徒どもに後れはとらないでしょう」
「……アキンド邸からも騒ぎが聞こえますわ」
「アキンド様は日頃から大量の傭兵を召し抱えておりますので、こちらも簡単には破れますまい」

 雲地区に居を構える貴族や豪商の多くは私兵を擁している。金に糸目をつけずに雇い入れた彼らの実力は高く、個々の戦闘力なら並の警備官を上回る者もめずらしくない。

「他の家の方々も似たようなものです。他家のことよりも今はご自身の心配をなさってください」
「なるほど、たしかに雲地区のみなさまには身を守る手段がありますわね。けれどもそれ以外の人たちはどうですの? 先ほどミーアから聞いた話ですと、潮風地区はひどいありさまだったとか……。ついきのう楽しくお買い物に興じた街が賊徒に荒らされているだなんて、義憤に耐えかねますわ。わたくしには魔術の力があります、動く鎧ごときに後れをとるつもりはなくてよ。わたくしたちのシーホークは、わたくしたち自身の手で守るべきですわ」

 ウェンディはみずから出向いて暴れまわるリビングアーマーたちを退治しようと言っているのだ。

「ここがお嬢の、ナーブレス領なら『高貴なる者の義務』を果たすべきかも知れないが、そうでないのだからあえて危険を冒す必要はないだろう。警備官たちに任せておけ。君子危うきに近寄らず、だ」
「義を見てせざるは勇なきなり! とも言いますわ」
「勇気と蛮勇はちがう。相手の目的も規模も不明なのに、敵前に身をさらすのは無謀だ」
「危険を自ら引き受けるのは無謀でなく勇気! そして勝機が見えても危険を恐れるのは慎重でなく臆病でしてよ!」
「おお、よくぞおっしゃってくれました。それでこそナーブレス家のご息女!」

 ナーブレス公爵家はアルザーノ帝国建国以来、帝国王家に忠誠を誓う古参の大貴族の筆頭格だ。奉神戦争の影響で困窮した貴族たちの多くは領地を奉還し、領地貴族から宮廷貴族へ、領主から代官へと鞍替えしたなか、卓越した領地経営手腕を発揮して財政難を克服し、自身の領土を守り切ったという矜持が存在する。
 肥沃な土地から生産される良質の葡萄に支えられたワイン基幹産業に金融業を営み。さらに利益を生み、富み栄えていることを口さがない者は運が良いだの商人貴族だのと揶揄するが、その土地を戦火から
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