シーホーク騒乱 3
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えた。
ウェンディがふだん着用している制服やローブは身体まわりの気温・湿度調整魔術である黒魔【エア・コンデショニング】が永続付与されており、見た目よりも夏は涼しくて冬は暖かい。同様にわずかではあるが防御力を上昇させる白魔【プロテクション】も付与されている、とても便利な代物だ。
「みなをロビーに集めなさい。緊急事態ですわ!」
所属不明の兵隊たちが街中で暴れている。彼らは雲地区にも押し寄せ、家々を荒らしてまわっている――。
「全員お集まりでして?」
学院の制服に着替え、腰に小剣を佩いだウェンディがロビーに姿を見せると、集められた使用人たちのあいだにただよっていた不安と緊張がいくらかやわらいだ。
「無頼の徒がわが屋敷に乱入して狼藉を働こうとしていますわ。今からこの身の程知らずの賊徒どもを蹴散らしに行きますので、われはと思う者は名乗り出なさいまし」
「とりあえず屋敷に入ってきた連中はたおしたぞ」
「早ッ!」
秋芳とマスターソンがボロボロになった鎧をかついで入ってきた。
「リビングアーマーだ。二〇体ほど片づけた」
「まぁ、これがあの……」
ウェンディも動く鎧のモンスターについては知っていた。
「こうして見ると、ただの鎧にしか見えませんわね」
「所属を示す刻印や徽章のたぐいは見つからない。こいつを使役している魔術師はどこかの国の軍人というわけではないようだ。少なくとも正規兵ではない」
魔術は軍事技術であり、魔術師は軍属になる例が多い。そして国に仕えている魔術師は特に魔導士と呼ばれる。この世界に来てまだ日の浅い秋芳だが、そのくらいのことは学んでいた。
「まぁ、詮索するのは官憲に任せるとして。このままだと危険なので避難するか籠城するか決めてくれ」
「なんですって!?」
「もし他国からの攻撃だった場合、すぐに脱出しないと門を封鎖されて街から出られなくなってしまう。公爵家の人間として身柄を拘束されるといろいろやっかいだろう」
「…………」
「シーホークに攻め入る国なぞ、レザリアくらいなものでしょう。しかし先の大戦中ならいざ知らず、無差別に民間人を襲撃するような真似をするとは考えられませんな。……聖キャロル修道会あたりのテロならともかく」
隣国であるレザリア王国との統治正当性をめぐる国際緊張は近年高まるいっぽうだ。マスターソンの言葉に出た聖キャロル修道会などという過激派集団が台頭し、保安局も神経をとがらせている。
「遠くから発砲音が聞こえてきました。銃士隊が鎮圧に乗り出しているからには制圧されるのは時間の問題でしょう、それよりも下手に動き回ると流れ弾に当たる恐れがあります。騒ぎが治まるまで屋敷にて静観なさっていてください。このマスターソンがいる限り賊徒ども
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