シーホーク騒乱 3
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魔闘術。
拳や脚に魔術を乗せ、打撃の瞬間、相手の体内で直接その魔力を爆発させる魔術師ならではの近接戦闘術。魔力操作の技術がなければ使えず遠距離攻撃という魔術の利点を捨てることになるが、接近戦では絶大な威力を誇る。
「いや、ただの発勁と擒拿だ。そんな技は知らない」
武術はもっとも実践的な呪術魔術のひとつ。そのような考えのもと、秋芳は幼い頃から鍛錬を重ねてきたのだ。
これが獣型のモンスターであったならまた話は変わってくるが、襲撃者が四肢を持った人型モンスターである以上、対人用の武術は大いに効果を発揮した。
「なんであれこのマスターソンも、まだまだ若い者に負けてはおられませんな!」
転倒して起き上がろうとしている鎧にむかって容赦なく手斧を叩き込み、破壊していく。
六体いたリビングアーマーはやがて動きを止め、ただの半壊した鎧と化した。
(……呪術が使えないせいか、妙に冴えるな)
身体的、霊的欠損というものは、呪術者にとってむしろ『強み』となることがある。
東北地方には「いたこ」と呼ばれる巫女が死者の霊魂を呼び寄せて意思の疎通をする、口寄せという儀式が存在する。
この儀式をおこなう巫女たちは強い霊力を持つことで知られており、同時に盲目や弱視といった視覚障害者でもある。
こうした例をもとに目が見えないからこそ見鬼の才が磨かれる、霊視能力が増すという説は古くから呪術関係者らの間にある。
つまり霊力、呪力が身体的なハンディキャップの補完作用として強化されるという見方で、ほかにも隻眼、隻腕、隻脚など。身体的、ひいては霊的欠損による逆説的な霊力の強化は、古いタイプの呪術師たちの間に語り継がれてきた。
呪術が不自由だからこそ武術が冴える。
「武と魔、魔法戦士でも目指してみるか」
壊れた門のむこうから次々と現れるリビングアーマーの集団を前に、秋芳はそうひとりごちた。
いつもより遅い朝食を食べ終えてお茶を飲んでいたウェンディは外から聞こえてくる喧騒に眉をしかめる。
閑静な雲地区にはおよそ似つかわしくない、ひどく荒々しく暴力的な響きの騒音。
それが徐々に大きくなり、近づいてくる。
いや、騒音などではない。
物の壊れる音にまざって人の悲鳴や怒号まで聞こえてくる。
「お嬢様、敵襲です〜!」
「なんですって!? 簡潔、簡略、可及的すみやかに説明なさい!」
「かくかくしかじか、ホニャララホニャララで――」
「かくかくしかじか、ホニャララホニャララじゃわかりませんわ!」
「ある事柄の説明を省略した際に具体的内容の代用としてもちいられる文章表現ですってば!」
などと戯れている場合ではない。説明を聞いたウェンディは部屋着を脱いで学院の制服に着替
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