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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 2
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普化天尊!」

 雷が迸り稲妻が乱舞し、電流の嵐が、熱と光の颶風が元の陣営をズタズタに切り裂いた。

「――東方請青龍、南方召赤龍、西方請白龍、北方召黒龍、中方請黄龍、用心降雨、奉請衆方五雷上吾身、奉請衆方五雨上吾身、奉請衆方五風上吾身、雨雨雨雨雨――」

 さらにその後にあらためて五龍祭を続行。その呪力を行使して宋の陣営に恵みの慈雨を降らせた。
 冷たく乾いた大気を温かい雨が湿らし大地を潤す。さらに局地的に大雨を降らし、給水船や貯水場の水槽をいっぱいに満たした。

「こ、これは!?」「なんと温かい、冬の雨とは思えぬ」「これで当分は渇きに苦しめられずにすむぞ!」「それに見ろ、元の陣が今の嵐でめちゃくちゃではないか」

 居並ぶ人々から拍手と歓声があがる。

「おふたかた、みごとな方術でした。今回のこと、国難をお救いいただき、まことにかたじけなくぞんずる。恵みの雨どころか元の軍勢にも痛手をあたえてくれたこと、ひとえにおふたかたのおかげでござる」

 張世傑が進み出て一礼すると、それに陸秀夫も続く。

「されば謝礼をお受け取りいただきたい。とりあえず些少ながら銀五百両を用意いたします。また今後も陣内にとどまり我らを助けてくださるとありがたい。もし官吏によって迷惑をこうむるようなことがあれば、張世傑、陸秀夫の名をお出しくだされ」

 油紙につつまれた馬蹄型の銀子が運ばれてきた。

「おお、銀か。ここが夢の世界じゃなきゃありがたくちょうだいするんだがなぁ」
「じゃあおことわりする? かさばるし」
「いや、もらえるものはもらっておこう。成功報酬をことわるのは冒険者の礼に反する」
「だれが冒険者よ、だれが」

 中国の好漢や武侠は報酬や謝礼などを受け取るのを悪びれない。余裕のある者が余分に報酬をくれる時は受け取るのが礼儀というものだ。ことわるほうが失礼なのである。いっぽう自分に余裕のある時はこまっている人を助けないと『あいつは吝嗇だ』と言われることになる。
 ちなみに古来より中国では銀を基本通過にしていた。ものすごくおおざっぱだが銀五十グラムが一両で、一両が十銭、一銭が十文という計算になると思われる。十人くらいで宴会を開くのに必要な額は銀一両といったところか。
 それが五百両もある。

「これ、リアルに持って帰りたいなぁ。気合入れて目覚めれば一両くらい持って帰れないかなぁ」
「そんなわけないでしょ、あきらめなさい」

 ここはあくまで仮想現実、夢の世界。さらに夢の世界にいられる時間は一日のみ。そういう設定だ。

「どうせなら宋を助けて元をやっつけてみたかったが、そこまでする時間はなさそうだ。明日の今くらいまでのわずかな時を楽しもう」
「ええ、そうしましょう」

 元の手先を蹴散らし、恵みの雨をも
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