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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 2
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。
見れば宋軍が陣取る崖山の上空に黒雲が立ち昇り稲光が見える。
波は荒れ狂い、遠目にも強風豪雨にさらされているのが見てとれた。
「なんと!」「かように天が急変するとは」「この時期に嵐とはめずらしい」「まことの呪術か!?」
まわりの将兵らからおどろきの声があがる中、張弘範が落ち着いて問いかける。
「……準なんとかどの」
「準天美麗貴永楽聖公の方?でございます、張元帥」
「このままあの嵐で宋の軍陣を壊滅できるのですか?」
「ははは、さすがに拙僧でもそこまで強力な暴風雷雨は一朝一夕では呼べませぬ。今はまぁせいぜい大雨を降らして宋の陣を水浸しにする程度でございます」
「雨を、降らしておるのですか?」
「そうです」
「水を、もたらしておるのですね」
「そうです」
「…………」「…………」「…………」
「んん? みなさま、どうなされました?」
「このどアホっ、なにさらしてけつかんねんッ!」
思わず故郷の西夏なまりが口から出て李恒が方?をどつき倒した。
「ば痛っ!? なんばすっとですか?」
方?のほうもまた江南なまりが口に出る。
「補給を封じ、水と糧食を絶って干上がらせているのに雨を降らせるアホがどこにいるっ!」
「なんと、それは初耳。そうと知っていれば別の術を披露したものを……」
宋軍への兵糧攻めは周知の事実。べつに箝口令を敷いていたわけでもないのに、それを知らないとは……。
怒りをとおりこしてあきれ果てた諸将だが、張弘範がいち早く我に返り声をあげる。
「まぁ、天を動かし雨を降らせたのはたいしたもの。準天なんとか公に神通力があるのはわかった。わかったからとっとと雨をやめさせてくだされ。こうしている間にも宋軍の将兵はのどを潤し、せっかく弱らせたのに活力をあたえてしまう」
「わかりました。それと拙僧の号は準天美麗貴永楽聖公、名は方臘です。――清浄光明、大力智慧、無上至真、摩尼光仏――むんっ!」
ふたたび摩尼真言を唱え、みずからの呪術を解除しようとするのだが、いっこうに変化はおとずれない。
「どうした、早く止めよ!」
「――清浄光明、大力智慧、無上至真、摩尼光仏――。むむむ」
「なにがむむむだ!」
「なにものかが拙僧の術を返そうと術式に手をくわえております。おそらくは例の呪術師でしょう」
「なんだと? それはどういうことだ?」
「なになに、なにもご心配めさるな、そう簡単に後れはとりませぬ。ハァーッ! 清浄光明、大力智慧、無上至真、摩尼光仏――」
しきりに印を結び、声高に真言を唱える方臘の身体からは霊気があふれ、その姿は見鬼ではない将兵達の目にも光り輝いて見えた。
(この方臘と名乗る怪僧。風雨を呼んだ事実といい、たしかに実力は本物のようだ)
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