-後をついて行く-
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数刻後。時刻は夜中。みんなが寝静まった丑三つ時。
「……眠れない」
昼間に死体の話を聞いたせいだろうか? 目が冴えて全く眠れない。寝室を出て隣の部屋のドアを少しだけ開けて中を見てみるとスヤスヤと気持ちよさそうに寝ているシレーナの姿。
どうやら眠れないのは自分だけのようだ。
「少し夜風でもあたってこようかな…」
寝ているシレーナを起こさないように静かにドアを閉め直し部屋を出てみると
「…あれ? あのこにいるのは………ランファ? こんな時間に何処へ行くんだろう」
真夜中の廊下を何処かへ向かって歩くランファの後ろ姿が見えた。
明かりは点いているが従業員の姿も他の客の姿もない。ランファとルシア以外ここには誰もいない。
「あれ? 外で待機してるって言ってたムラクモさんもいないや。どうしたんだろう」
この時ルシアの頭の中には二つの選択肢があった。
-後をついて行く-
ルシア達を邪悪なる犯罪者から護るとい使命を受けておきながら部屋の前に立っていないムラクモは絶賛仕事をサボり中なのかと頭の中に過ったがムラクモも人だ。サボりたい時もあるだろう。そこをツ級するのは男として良くないと思う。
「よしっ。そうなったらランファの後をついてってみようかな」
破天荒で我儘で個人行動が多く勝手な事ばかりして冷や冷やさせるランファ。たぶん今ここで追いかけて叱ったとしても「ごめんちゃい」と舌を出してウィンクするだけで反省せずするりと逃げられてしまうだろう。
ルシアは色々考えたすえ、ランファにちょっとしたドッキリを仕掛けることにした。
気づかれないように抜き足差し足と静かに足を一歩一歩踏み出す。誰かを尾行するのは初めての事。でも普段狩りをする時などにする獲物となる猪など動物に気づかれないように細心の注意を払った行動には慣れているつもりだ。
それに一応はか弱い女子のランファがこんな夜更けに一人出歩くのは危険だし、あとこんな夜更けになにをしに部屋を出たのかも気になるし、と湧き上がる好奇心を押さえ静かに上へと続く階段を上って行くランファの背中を追いかける。
「屋上!?」
ランファに気づかれないように彼女の背中を追いかけることに夢中になりすぎて今自分がいる場所を理解していなかった。気が付けば夜の冷たい風が吹く屋上へとたどり着いていた。
ごく自然にランファは屋上の奥へと進んでゆく。
「夜の誰もいない屋上に、物憂げな表情でやって来たランファ……も、もしかして!?」
どこで植え付けられた知識か知らないがルシアの中では、屋上など高い場所で夜の帳に包まれた風景を見る少女がいればその人が飛び下り自殺するものだと誰かに教えられているため、ランファはもしかして何かを思い悩みその身
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