-後をついて行く-
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を投げるために屋上へやって来たのではないかと推測した。
ドアを開け屋上の奥へと歩いて行ったランファの背中を追いかける。
「あれはっ!?」
思ってもみなかった人物を発見して思わず傍にあった水を溜めるタンクの裏に隠れた。
タンクやなんやらが置かれていて屋上には視界となる場所が沢山あり隠れるには苦労しなさそうだ。寒いので凍死の心配はあるが。
「………」
空に浮かぶ月を眺める女が一人。
風になびくその赤い髪、雫を落としているような瞳はまるで月を恋焦がれ思うかぐや姫のよう。
「待たせちゃったかな」
後からやって来たランファはかぐや姫に向かって口を開いた。
ゆっくりと振り返るかぐや姫。その表情はどこか儚げで悲しそうなものだった。
「どうなされたんです? ランファさま。
こんな夜更けに……こんな寒い屋上に来てだなんて……あ。もしかしてこの月を見ようと?」
寒さで鼻を赤くし頬を桃色にしてはにかむかぐや姫。
「………」
呼び出した張本人であるランファは難しい表情のまま固まっている。目をつむり何かをじっと考えているようだ。
硬く力いっぱいに握りしめられ血管が浮き上がった握りこぶしには何かが握られている。
何がどうしてこうなっているのかよくわからない。
ルシアにはタンクの裏で二人の会話をただ見ている事しか出来ない。
すぅーはぁー。ランファは腕を広げ体全体を使って息を吐き吸い込み、深呼吸をする。
まるでこれから行うことに覚悟を決める為の前準備のように。
少々大袈裟なような気もする深呼吸終えた後、キッと閉じた瞼を開き、今まで見たこともないような真剣で真面目な表情で
「すみませんでした。こんな寒い日にこんななにもない場所に呼び出してしまってムラクモさん、いや叢さん?」
悪魔でおちゃらけた口調で遊んでいるかのように
「それとも紅き鎧の騎士さんの方かいいかな? にひひ♪」
はっきりとした口調で言いきった。
「ッ」
月からやって来たかぐや姫は、いや、ルシアからヨナという世界でたった一人しかいない大切な家族を奪い、シレーナの目の前でご近所さんを殺した狂犬ザンクの仲間である般若の面をつけた紅き鎧の騎士、叢はハッと目を見開いた。
「はい? 叢さん……です? えっとどなたでしょう。ランファさまのお知り合いの方ですか」
が、すぐにトロンとしたムラクモの表情となり、オドオドとした口調で申し訳なさそうにランファに訊ねた。
そうだ。ムラクモはムラクモだ。臆病で恥ずかしがり屋の可愛いムラクモだ。憎き紅き鎧の騎士 叢なはずがないんだ。そう自分に言い聞かせるルシア。
だがしかしいつだって真実と言うのは残酷な物だ。
「やっぱりとぼけるよね」
大きく大袈裟
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