その十九「アラミド/ルアックは涙味」
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いわし雲が美味しそうな秋の空 10月の始め頃の出来事。
町全体がオレンジに染まり 夕日が眩しい商店街。
楽しみに待っていた本が今日入荷したよ。
と、本屋のおじさんから朝家に連絡を貰って
すぐにでも行きたかったけど今日は平日。
学校があるからしばらくおあずけです。
HRが終わり、学校が終わったらすぐに教室を飛び出して本屋さんに向かって猛ダッシュです。
おじさんは取っておいてくれる。
と、言っていたけどそれでも早く自分のものにしたくて、足が自然と早歩き 走り出してしまいます。
鏡がないからわからないけど、もしかしたら今僕の顔は嬉しさでニヤけているかもしれませんね。
「おじさんっ!!」
瞳をランランと輝かせ、本屋の今どき手動ドア? を開けて中へ入ります。
やっと、やっと待ちに待ったあの本が手に―
「やあいらっしゃい下級生くん」
入ると思った瞬間その思いは泡となって消え去りました。
◇
「じゃあおじさん代金はこれで〜」
先に本屋にいたのは学校の番長をも従える不良の中の不良。
ギングオブ不良。裏社会ではボスと呼ばれているような人。
1つ上の先輩、逆らう事なんて許されません。
僕はいつもこの人為に行動させられます。
朝の登校時間は 抜き打ちチェックで持ち物検査をしていた生徒会の人たちにばれないように抜け道からこっそり登校させられたり
お昼には購買で一番人気のカツカレーパンを買いに行かされたり
夕方は持って来さされた僕の宝物をボッシュートされたり
そして今日もまた
「じゃ行こっか」
と、僕の背中に腕を回す先輩に従い僕達は本屋を出て路地裏へ連れていかれます。
「はい。おつり」
「ど、どうも……」
きっと「これ」を読んでいる人は「?」って顔をしているのでしょうね。
これはさっき先輩が買った本の代金のおつりです。
どうしてそれを僕にくれたのかと言うと、先輩が買った本はもともと僕が
「やっぱり馴染みの本屋があるのって得だよね〜」
「そ、そうですね」
ずっと前から欲しかった本だからです。
先輩に目の前で横取りされるのはこれで何度目だろう……。
行きつけの本屋の存在を知られてからかな。それとも先輩と出会ってからかな。
どちらにしても僕は先輩の都合のいい舎弟であることには違わない。
「どうしたんですか〜。ほら行きますよ〜」
路地裏の奥へ消えていく先輩の背中を今日も追いかけます。
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