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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 1
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泥から金が生じたように見せかけていたのだ。

「――かような細工の手品でぬか喜びしている場合ではありません。王平、あなたは井戸からあふれた水がすべて本物の真水か確認しましたか?」
「え? い、いえ。ですが井戸から大量の水が湧くのはこの目ではっきりと見ました。あの勢い、あの量。小手先の手品という域を超えています」
「人は信じたいものを信じる生き物。神仙の秘術で窮地を救われたと思ったことによる心理が、たんなる水芸をそう見せた可能性もあります」
「いや、しかし……」

(この人はあたし達の呪術は乙種だって言いたいみたいね)

 甲種呪術と乙種呪術。甲種は陰陽庁によって確かな効果が認められた本物≠フ呪術で、乙種はそれ以外の呪術を指し、おもに思い込みや暗示などによる精神的な束縛などがあてはまり、手品の類もこれにあたる。

(ああ、この時代の人にしては合理的な考えをする。さすが科挙に受かった進士はちがうな)

「では陸宰相はこの道士らに雨乞いをさせることに反対なので?」
「実は私も反対だ。さきほど宰相も言ったが君子は怪力乱神を語らずというではないか」
「いやいや、蜀漢の諸葛孔明も赤壁の戦いで風を呼び勝利にみちびいたではないか。なにもそうかたくなにならなくても」
「あれは祈祷で風を起こしたのではない、季節風が吹いて風向きが変わることをあらかじめ予測していたのだ」
「しかし普段から河川に親しんでいる呉の諸将がその時期に風向きが変わることを知らず、よそ者の孔明がそれを把握しているのは不自然ではないか?」
「呉の諸将も四六時中船の上にいるわけではない。孔明は毎日船に乗る地元の漁師に聞いたのだ」
「儒者はなにかと怪力乱神を語らずと言うが――」

 話題が二転三転し、またもや喧々諤々の様子となる。 

(ここの人達って議論が好きねぇ)
(言論を以って士大夫を殺さずという宋の国是が生きているな。この精神のおかげで宋朝は文化的に隆盛したんじゃないだろうか)
 
 今の日本は宋の時代に似ているところがあると秋芳は思う。
 風流天子こと徽宗皇帝の御世に中国の経済と文化は高く発達した。徽宗皇帝はすぐれた芸術家で書画に通じていて個人としても悪人ではなかったが、みずらの贅沢のため民衆に重税を課したり、国費を使って南方から造園用の巨石や巨木を運ばせるなど、政治家としては無為無能どころかそれ以下の人だった。
 貪官汚吏がはびこり政治は腐敗し社会は荒廃し、やがて北方に起こった女真族の金王朝の前に宋の首都開封は陥落し、華北の地を奪われ、北宋は滅ぶ。以降は南方の臨安に都を移して南宋の時代になるわけだが、この南宋もまたモンゴル族の元によって滅亡することになる。
 文化と経済はそれなりだが、お世辞にも政治は一流とは言えず、外交下手で軍事面に不安があり
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