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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 1
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気合いとともに井戸の底に剣を投げ込むと、数拍の間ののち間欠泉のような勢いで水が湧きだし、井戸をいっぱいにするどころか縁からもあふれだし、すり鉢状の斜面は泉の様相となった

「おおっ、これは……!」

 水が尽きかけているとはいえせっかく水気のある井戸だ。一から創るのではなく水脈に活を入れて水を増やすことに成功したのだ。
 弘法大師空海には水にまつわるエピソードが多い。
 日照りに苦しむ人々を救うため雨を降らせたり、水を湧かせたりといった逸話が日本各地に数多く存在する。
 ひょっとしたらこのような呪術をもちいて湧き水を生じさせたのかもしれない。

「ありがたい、これでまだまだ戦えます。その神通力でどうか宋朝をお助けください」
「わかりました、微力ながらお手伝いしましょう」

 義を見てせざるは勇無きなり。秋芳はふたつ返事で承諾した。





「ねぇ、ここは昔の中国なの?」

 王平に案内されて海上要塞にむかう道すがら、京子が小声でたずねる。
 小首をかしげて、のぞきこむようなかわいらしい仕種。耳元をくすぐるような愛らしい声とともに香水のかすかな香りが鼻孔に流れ、なんともいえない心地良さになる。

「そうみたいだな、崖山の戦い。だいたい七百年以上前のできごとで、この戦いで南宋は元に敗れ、滅亡してしまう」
「元てのはモンゴルのことよね、鎌倉時代に攻めてきた元寇の元。南宋は二十五万人もいたのに負けちゃったの?」
「二十五万といってもそのほとんどは文官やその家族、宮女に宦官、市井の人々で、実戦に参加できるような兵士の数は一万に満たなかったとか。それにサバを読んでる可能性もある。なにせ白髯三千丈という誇張表現をするお国柄だからな、長平の戦いの捕虜四十万人虐殺とか、官渡の戦いの袁紹軍七十万とか、あきらかに盛りすぎだろう」
「じゃあ元のほうは?」
「およそ二万。南宋側の非戦闘員を除外すると約二倍の兵力差になる」
「……二十五万は盛りすぎとか非戦闘員ていうけど、それでも相手の十倍くらいはいるんじゃない? みんなで力を合わせてやっつけられなかったのかしら。一人一殺どころか十人一殺じゃない」
「だれもがみんな戦う意思を持っているわけじゃないし、さっきの王平さんの言葉のように消耗が激しくて戦意を失い、そんな気概を持つどころじゃないんだろう。腹が減っては戦はできぬ、補給もなしに精神論だけで戦争に勝てるわけがない」
「たしかに、それはあたし達日本人がよ〜く知ってるわ」
「それと南宋は皇帝が、祥興帝・趙?(ちょうへい)が戦陣にいる。余剰兵力のない状態で下手に攻勢に出て負けてしまい皇帝の身に危険がおよぶことは万が一にもあってはいけない。鉄壁の守りこそ最上の戦法だと判断したんだろう」
「でも籠城戦て外からの援軍が来てくれること
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