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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 1
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た。
初戦こそ勝利した宋軍ではあるが、海上は元の軍船に封鎖されて補給の道は閉ざされ、昼夜を問わず敢行される元軍の波状攻撃に消耗する一方だった。
「なるほど、お二人は賀茂秋芳(ファマオ・チュウファン)と倉橋京子(ツァンチィアォ・ジンズー)様という修行中の道士でしたか」
王平の話す言葉は日本語ではない。中国語に似ていたが奇妙なことに耳に入る音は異国の言語なのだが、頭には日本語として伝わってくる。
夢の中ならではの摩訶不思議な現象だった。
「ここは宋軍二十五万の喉を潤す唯一の水源なのです。もしこの場所を占領されれば我が軍はおしまいでした。秋芳様と京子様には感謝の言葉もございません」
「二十五万人もいるんですか!?」
「はい。元の支配を善しとしない気概ある文武百官や民百姓が皇上の下につどい戦っているのです」
「しかしそれだけの大所帯ですと糧食をまかなうのも大変でしょう」
「……そうです。正直なところ、ここから採れる水だけでは不足でして、我が軍は渇きに苦しんでおります」
「たしかに、見たところ井戸の水位はかなり下がっていて底が見えるくらいです。干上がるのも時間の問題でしょうね」
「それにただ飲む水がたりないだけでなく米を焚くこともできず、乾した米や肉を飲み下すのさえ苦労するありさま。耐えかねて海の水を飲む者もいますが余計に渇きが増して嘔吐して苦しむだけ。給水船の水槽もほとんど空になり、まだ幼い皇上すら欲しいだけ水を飲むこともできずにいるのです。ああ、おいたわしい……。せめて五日に一度でも雨が降ってくれればここまで渇きに苦しめられずにすむのですが」
「私達の学んだ方術が役に立つかもしれません」
「本当ですか!?」
「はい、たとえば……」
秋芳はそう言って井戸のほとりに下りた。
木でも火でも土でも金属でも水でも、呪術によって生じるモノは本来この世には存在しないかりそめの物体、ないしエネルギーであり、一時的に呪力が姿形をもったあやふやな現象にすぎない。
それを現実の物としてしっかりと形作るには、より複雑な術式を組んだり余分に呪力をくわえる必要がある。
かつて秋芳は水天の真言をもってプールいっぱいの水を創り出したことがあるが、その時がそうだった。
さて今回はどうするか――。
地面に落ちていた剣を拾うと導引を結び、口訣を唱える。
「此水不是非凡水、水不洗水、北方壬癸水――」
さらに呪文を唱えつつ、手にした剣の平を指でなぞる。
「一点在地中、雲雨須臾至、病者呑之、百病消除――」
そして指先で剣身をはじくと、水滴が生じた。
二度三度と剣身をはじくたびに水滴は大きく、その数を増し、剣身からはまるで水瓶を逆さにしたかのように水が流れ出てくる。
「金生水――、疾く!」
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