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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 1
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にして全身から力が抜け落ち、盾が下がる。

(毒か!)
 
 意識はあるが痺れが広がり身体が言うことを聞かない。
 数十本の矢が自分目がけて飛んでくる様が妙にゆっくりと見てとれた。

「ここまでか……!」

 次の瞬間。全身を矢で射貫かれ、ハリネズミのようになった自分の姿を想像し、戦慄した。

「以木行為風陣防、疾く!」

 木行を以て風陣と為し防げ。
 だれかの声が響いたその時、一陣の風が巻き起こり、王平ら守備隊をつつみ込んだ。飛来した矢はことごとく風に防がれ、地に落ちた。

(!?ッ)

 これはいかなる僥倖か、だが幸運を天に感謝する間もなく剣光白刃をきらめかせて敵の軍勢が殺到してきた。
 こちらの二倍や三倍どころの数ではない、十倍か二十倍か、あるいはそれ以上。王平は今度こそおのれの死を覚悟した。そのとき――。

「眩め、封、閉ざせ。急急如律令(オーダー)

 また誰かの声がすると、迫りくる兵士達がばたばたと倒れ伏し、昏倒した。
 だが倒れた兵士の後ろから次々と新手の兵が押し寄せてくる。
 するとまばゆい光があたりを照らし、かぐわしい匂いが立ちこもる。見れば空に螺髪(らほつ)に白毫。青い蓮華のような瞳をした菩薩が左右に金と銀の竜をはべらして浮かんでいた。

「アヒンサ〜、不殺生戒。人を害してはいけない」

 澄んだ声が朗々と響く。

「?呀〜!?」「ヤーナ!」

 まったく予期せぬ菩薩様の顕現に殺気立っていた兵士達は呆然自失。ある者はひざまずいて念仏を唱えだし、ある者は一目散に逃げ出した。いずれにせよ戦闘意欲は完全に失ってしまったようだ。

「武器を捨てて家に帰りなさい。槍や剣で人を害するかわりに鍬や鋤で畑を耕して平和に暮らしなさい。両親に孝行し、お年寄りをいたわって、人の子どもでも大事にしなさい。女性を貴んで炊事洗濯家事全般を手伝い、祖母と母親と姉と妹、伯母と叔母、従姉妹と嫁さんには週に二回は食事をおごりなさい。あと――」

 仏の声を大音声がさえぎる。

「ええい、逃げるな! すでに滅びし宋の残滓を救いに御仏が参られるわけがない。これなるは幻。妖術によるまやかしぞ!」

 騎兵が一騎、槍を手に進み出た。装備からして一般兵ではなく、一軍を率いる将官のようだ。

「哈ァァァッ!」

 気合いとともに菩薩目掛けて槍を一閃。菩薩の身を守ろうと金竜がその身ごと割り込んで防御すると、全身をおおう鱗が霞のごとくぶれる。
 ラグと呼ばれる現象だ。

「この罰あたり者めが〜」

 菩薩が身をひるがえし、槍を手にした将官の頭に掌打を打ち込み、馬上から放り投げたあと、ストンピング蹴りを何発も喰らわした。

「どうだ、仏罰を思い知ったか!」
「ひぃ〜、なんという説得
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