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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 1
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(なにせ半世紀以上も実戦を経験したことがない)しばしば外国に領海領空を侵犯され、夷狄におびやかされる日々――。
 宋の時代の中国といろいろとかぶる。

「陸宰相にもうしあげます」

 これでは埒が明かない。秋芳はみずから場の収束に乗り出した。

「先ほど怪力乱神とおっしゃいましたが、私達の使う呪術はそのようなものではありません。神はともかく怪、力、乱はあてはまりません」

 怪力乱神の怪とは怪異を、力は怪力を、乱は道理にそむき世を乱すことを、神は鬼神のこと。理性では説明のつかない超常現象の類の総称だ。
「ほう、それはどういう意味ですかな?」
「荒唐無稽な神頼みではなく、かといって手品のような種や仕掛けがあるわけでもございません。天地自然にある陰陽五行の気の流れを見て読み、自在に組み替えたりすることで風を起こしたり火や水を作ったりと、様々な変化を生じさせることができますが、それらは荒唐無稽な怪異でも道理に反するものではなく、きちんとした術理術式に則った人の技です。もっとも呪術に縁のない人から見れば摩訶不思議な怪奇現象に映るかもしれませんが、それはみなさんにそなわった力も同じことです」
「我々にそなわった力、とは?」
「ここにいる文官のみなさんは難関である科挙に合格した進士。四書五経をそらんじるだけでなく、みずから考えた詩賦や策もお書きになられる」

 ここでいう策とは時事問題などについて書く作文のことだ。

「たとえ文字の読み書きを学んでも、おいそれとできることではありません。才能のある者かさらに研鑽を重ねて到達できる領域。一般人からしてみれば超人的な能力だ。同様に武官の方々も武科挙に受かった武進士」

 武科挙。あるいは武挙。その名のとおり科挙の武官版の登用試験だ。

「馬を駆っての騎射や数人張りの強弓を引く試験などがあったと思います」
「うむ、そのとおり」
 
 馬上から矢を三射して的を射る騎射、五十歩離れた的を射る歩射、百斤の弓を引きしぼる開弓、百斤の青竜刀で演武する舞刀などの実技試験のほか、孫子や呉子といった兵法書を清書する筆記試験があったという。
 ちなみに斤という重さの単位は時代によってかなりちがう。三国志の時代の一斤はおよそ222,4グラムで、関羽の振るった重さ八十二斤の青竜円月刀は約十八キログラムになる。
 これが宋代になると596,8グラムになるので『水滸伝』に登場する魯智深の振るった重さ六十二斤の禅杖は約三十七キログラムという超重量になる。

「それらもまた才能のある者がさらに努力して身につけることができる技術。一般人から見たら達人の技です。まして傷害無傷で敵将を素手で生け捕った唐の尉遅敬徳、一日に五百里を走る隋の麦鉄杖や肉飛仙の沈光、鎧をつけたまま宙返りして飛ぶ鳥をつかまえた楊大眼、
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