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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
観念
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ぐっと飲み込んだ。それは二人が同じ枕でともに眠ることを意味する。これは少し、いやかなり気恥ずかしく、ちょっとした覚悟が必要だった。

「ああ……、いや……、うん……」
「どうかしたの? あ、ひょっとして迷ってる? まぁ、たしかにそうよね。さっきはああ言ったけど、無許可で作った帝式の、魂に関連する呪術の実験につき合うのって普通に陰陽法違反だもの。……なんだかあたし、秋芳君に会ってからすごい勢いで不良娘になってる気がする」

 外出してお酒を飲んだり不法侵入したりは序の口で、極めつきはハロウィンの日の大騒動で、あの夜だけで何件の犯罪行為を重ねたことか。

「気にすることはないさ。なにせ日本は収賄や粉飾決算の犯罪者が平然として政治改革や道徳教育を説く、ありがたいお国柄だからな。俺が迷っているのは……」

 歩きを止め、あたりをうかがう。

「……陰陽庁の地下には『公には存在しない』とされるフロアがある。けっして表沙汰にはできない、陰陽庁舎の暗部、呪術界の闇。ごく一部の幹部にのみ代々伝えられてきたその場所は『ワケあり』の呪術犯罪者を拘束しておく呪的牢獄だ」

 たしかに、そんな場所があっても不思議ではない。陰陽庁とはそういうところだ。京子はだまって秋芳の話の続きを聞いた。

「幾重もの結界によって厳重に封印されたけっして開けてはならぬ牢獄と恐ろしい拷問部屋がある。陰陽庁には拷問のコースがいくつかあるんだが、たとえば富士コース、浅間コース、箱根コース、蔵王コース、別府コースなどなど」
「はぁ!?」
「さて、この中でひとつだけ他とちがったコースがあります。それはどれでしょう?」
「え、ええと別府だけが九州で他は本州よね。あ、でも富士だけは温泉がないし……」
「正解は別府」
「やっぱり九州だから?」
「いや、あとの四つには俺は行ったことがあるから」
「なんなのよ、もう!」
「冗談はさておき、そこの壁の向こうは空き部屋だ」
「……そうみたいね」
 
 京子は見鬼を凝らして内部を視た。いわゆる透視、クレアボヤンスの一種だが視覚でもって物理的に透視しているのではない。対象の気を見ることで姿形を感じる、射覆せきふと呼ばれる術だ。
 見鬼に長けた者は生物・無生物をとわず、そのモノのまとう気を見ることができる。

「あら、でも変ね。扉がないわよ」
「陰陽庁名物、謎の増改築でできた空間だろう。ちょっと見てくるから、まっててくれ」

 言うやいなや呪を唱えると壁の中に入っていった。
 禁壁則不能遮。壁を禁ずれば、すなわち遮ることあたわず。
 空を飛び、海を渡り、土に忍び、火にひそむ……。呪術師がその気になればたいがいの場所には入っていける。もちろんそれだけの術を会得するのは困難だが、呪術というのはつくづく便利なものであ
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