シーホーク騒乱 2
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考古学の授業でしか使わない。ウェンディのなかではそういうイメージだったのだ。
「呪術は奥が深く、幅が広い。それも様々な方向に。陰陽術において必要とされる才能は、極めて多岐にわたる。どんな才能であれ、武器にすることはできる――。俺のいた世界ではそういうふうに教えられている。あとこういう余興もできるぞ」
秋芳は机の上にあった布巾で頭を覆い、ヴェールのように目隠しをする。
「さぁ、これで視界が妨げられたわけだが、ちょっと目の前になにかかざしみてくれ」
ミーアが言われるままに手近にあったポットをかざしてみる。
「ポットだ」
「わぁ、あたりです!」
ウェンディが無言で燭台を差し出すと、これも言い当てた。
「【クレアボヤンス】を使っているわけじゃありませんわよね……」
「この世界の魔術じゃない。俺のいた世界の陰陽術のひとつで射覆と言う」
射覆とは箱や袋の中に入れてある物を言い当てる陰陽術で、賀茂忠行という平安時代の陰陽師はこの術の名人だったという。
安倍晴明と蘆屋道満が箱の中身を当てる、射覆勝負をした逸話は有名だ。
「ただしこの射覆は甲種じゃない、乙種だ」
「乙種……、つまり種も仕掛けもある手品というわけですわね。見破ってみせますわ!」
ウェンディは秋芳から向こうの世界の話を聞くうちに陰陽術についても耳にしていた。甲種呪術と乙種呪術のことくらいは覚えている。
花瓶、フォーク、ワインボトル、皿、人形――。
なんども繰り返し、トリックを暴こうと試みているうちに、ミーアが感づいた。
「あっ! わかっちゃいました。影ですよね」
目を覆う布巾は強く縛っているわけではない。
視線を下げれば床が見え、床には顔の前にかざした物の影が映る。秋芳はそれを見て言い当てていたのだ。
「このような小細工、詐欺師の手口ですわ」
「これもまた呪、そして人の智恵だ」
「わたくしが求めるのは賢者の叡智。このような狡智は不要でしてよ」
こんどはウェンディが語る番だ。
優雅さと気品、古き良き伝統的な貴族の教養としての魔術について――。
それらのことを秋芳にとくとくと語ってみせた。
「――了解した。天なる知慧に栄光あれ。魔術は偉大なり」
フェジテからの連絡。同志たちは首尾よく対象の確保に成功した。撤収すると同時に学院を爆破することだろう。
倉庫におさめられた五〇〇を越える数の木箱を前にしたカルサコフは課せられた任務を実行する。
「《虚ろなる兵よ・黒鉄の魂を宿し・目覚めよ》」
金属の軋む音を立てて箱の中の鎧たちが起き上がる。
「ニ〇〇は雲地区を襲え、もうニ〇〇は潮風地区を、残りは私についてこい。動くものすべてを殺し
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