シーホーク騒乱 2
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したのか、シーホークでは観光スポットや商業施設の建ち並ぶエリアを潮風地区、地元住人のうち比較的裕福な人の住むエリアを高潮地区、そうでない人の住む引き潮地区、貧困層の住む磯地区。
そして貴族や豪商といった富裕層の住むエリアを雲地区と呼んでいる。高潮でさえ届かぬ雲のある場所にナーブレス家のシーホーク屋敷はあった。
「お久しゅうございますお嬢様」
白い髪に白い髭をはやした老人がウェンディたちを出迎える。彼の名はマスターソンといって、ナーブレス家に古くから仕えている帝国騎士――領地を持たない最下級の貴族だ。
「ごきげんようマスターソン。わたくしのいないあいだ、変わりはなくて?」
「はい。おかげさまでなにごともございません。……強いて言うなら旧磯地区の堤防問題についてあれこれ取り沙汰されていることくらいでしょうか」
街のもっとも古い部分。西側の一角は堤防に囲まれていてマイナス海抜になっている場所が存在する。老朽化による多数の漏水が発見されており、もはや改修できる状態ではない。
いちど破壊する必要がある。だがその費用はどこから出すのか。長い間そのことで議論されていたのだが、商品の減税を条件に費用の一部をナーブレス公爵家が負担することを条件に解決した。
この堤防のあるマイナス海抜地域はもともと貧民街であったが、アルザーノ帝国女王アリシア七世主導のもと実施された近年の福祉政策の影響によって住民は他所へと移り、今は無人と化している。
あとはいつ、どうやって破壊するかが問題だ。
「そのことについて話をつけにまいりましたの。明日の商工ギルド会議に出席しますから、今日は早めに休みますわ」
「はい。お疲れでしょう、ご入浴の支度ができていますのでお食事の前にどうぞごゆるりと」
「気が利きますわね、お言葉に甘えて旅の塵を洗い落とさせてもらいますわ。ミーア、あなたも一緒なさい。アキヨシも湯浴みして綺麗になさい」
綺麗好きなウェンディは最低でも一日一回の入浴を習慣とし、従者にも清潔を求める。現代日本に生まれ育った文明人である秋芳もそのことに異存はない。素直に風呂に入った後、特に用事を命じられることもなかったので、その日も魔術関連の本を読みふけって就寝した。
翌日。
商工ギルドの会議は滞りなく終えたウェンディは秋芳とミーアをともなって件の堤防を視察した。
「これはでかい、実に見事だ。こうして見ると壊すのがもったいなくなるなぁ」
下から見上げた秋芳が正直な感想を口にする。
「ですが毎年の維持管理費が重なるいっぽうですし、破壊処分もいたしかたありませんわ」
「金にあかせて造った悪趣味な建物ならいくら壊してもかまわないが、風雪に耐えてきた古い建物は大事にしたいものだ。けど人々の安全や生
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