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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
刀会 2
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ようと――。
 それが良いわけがない。心の歪み、気の悪化は場所にも悪影響をおよぼす。霊気のバランスがくずれて瘴気を生み、霊災へと発展しつつあった。
 
「――あなたの歪んだ思いは人形に乗り移り霊災化を速めました。もともと人形、人の形をしたものには魂が宿りやすいといいます。そこにいるのはあなたの妻でも人間でもない。付喪神、タイプ・マテリアルに分類される動的霊災です」
「周……チャン……、周……チャン……、ア…イ…シ…テ…ル……。周チャン……」

 暗示の解けた周一の目に醜悪な肢体をしたドールの真の姿が見えた。
 ゴキゴキと手足の関節を鳴らし、感情のこもらない虚ろな目をしたヒトガタが。

「それはあなたを喜ばせるために都合のいい幻を見せてきました。なぜならそれは、その霊災は現実から目を背けたいあなたの心が生んだ存在。あなたの心そのものみたいなものです。さぁ、どうしますか? またそれのもとにもどって幻想の中で死ぬことを選びますか? それで幸せですか?」

 人は自分がいきづまった時に都合の良い幻想を見る。たんなる願望や妄想ではなく、身も心もその中に逃げ込むことができれば楽だろう。しかし人は現実の中でしか生きることができない。幻想に身を投じ、現実から目を背け続ければ、まっているのは破滅だ。
 自分一人が破滅するのなら、それはそれでいい。だが老いた母を、身を挺して自分をかばった家族を置き去りにするのか?
 周一の目に決意の光がやどる。

「ウワァァァァッ!!」

 暗示が解けた周一がみずからの手で決着をつけようと動く。人形の手にしたナイフを強引に奪い、それを一気に振り下ろす。狙うのは人形の首。殺すべきは自身の歪んだ心。
 そう、殺すべきは歪んだ心だ――。殺すべきは――。
 ぴたり、人形の首に突き刺さる寸前にナイフが止まった。

「周一さん……?」

 まさかまだ迷いがあるのか、ふたたび惑わされたのか、見守る巫女達の心に不安が生じる

「できない。おれにはこいつを殺せない」
「まさか、まだ未練がありますの!?」

 老母の傷口に治癒符を貼り治療していた眞白が非難の声をあげる。
「そうじゃない、そうじゃないんだ。……ただ」
「ただ?」
「こいつはおれのせいでこんなになってしまったんだろう? それなのに今またおれの勝手で殺すことなんてできない。こいつを助けてやってくれ」
「あんたまだそいつに……」
「そうじゃない! そうじゃないんだっ、もうこいつに依存することはしないよ。なぁ、巫女さん達。どうにかできないのかい? 退治とかしないで、生かしてやることは?」

 できなくはない。式神に、使役式にしてしまえばいいのだ。
 霊災と式神は似たような存在だ。極端な話、陰陽庁の管轄下にあり、人間が制御できる状態にある
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