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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
刀会 2
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るか、不動金縛りをこころみるか、鳴弦を放つか――。だが三人の巫女達が反応するよりも早く、老いた母が凶刃と息子の間に割って入り、盾になった。
「か、母さん……」
「周一……、いいかげんに目を覚ましておくれ……。母さんはおまえのことが心配で心配で……。おまえはねぇ、ニートだけど母さんのたった一人の息子なんだよ。いい歳して働きも結婚もしないことを責めたし、悲しんでもみせたけど、おまえは大切な息子なんだよ、遠くへ行かないでおくれ……」
意識を失い、くずれ落ちる老母の背中から流れ出る赤い血。鮮血の強烈な色彩が周一の混濁した意識を覚醒させた。
(……母さん……? そうだ、思い出した。おれは……、おれは無職の引きこもり、ニートだった!)
周一は毎日毎日、自分の部屋にこもって外出も仕事もせず、親戚からは『いい歳をして』とバカにされ続けていた。
現実がつらかった。いや、憎かった! 世の中には金とコネに恵まれた家に生まれたというだけでたいした努力もせず、芸能界に入って富と名声を得るやつらだっているのに、なんでおれはこんな普通の家に生まれてしまったのか。
金もないコネもない。ついでに才能もない三重苦を恨んで、恵まれた境遇のやつらを憎み、悪口雑言をネット上に書き込む日々がずっと続いていた。
それでも憂さは晴れない。それどころかいっそう酷くなるいっぽうだった。
インターネットで言いたい放題、書きたい放題というやつは趣味や道楽というような根本的な娯楽ではなく一時的な現実逃避にすぎない。酒や麻薬で気をまぎらわすのと一緒で、それのせいで新たに悩みや苦しみが生じることもある。
そして知るということは必ずしも人を幸せにはしない。
辺鄙な場所に生まれて、都会に出て行く器量も才覚も勇気もない。そこで一生終えるしかない。昔ならば鬱屈とした思いを抱きつつも、それが世界のすべてと思い、てきとうなところで妥協し、自分自身と折り合いをつけ、生まれ落ちた場所に相応の楽しみを見つけて、それなりに満足のいく人生をおくれただろう。
だが今はちがう。
インターネット等で外部の情報を簡単に知り得る。自分の境遇がいかに退屈か、そこから抜け出せない自分がいかに無能かを思い知る。
成功した者たちに対する恨み、つらみ、妬み、嫉み……。自暴自棄となり凶行に走る若者が少なからず存在するのもうなづける。
そんなある日、なにげなく購入したシリコン製リアルドールが思ったよりもすばらしく、それに耽溺するようになった。性欲を満たすたびにちがう女性の姿を想像して抱き。そうでない時は理想の『妻』のイメージを投影していた。
もともと引きこもりがちだった周一だが、部屋から一歩も出ないほどになり、現実のすべてから逃げるように人形を愛し続けた。いやな外界のことなど、なにもかも忘れ
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