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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
刀会 1
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減ることになる」

 などともっともなことを言いながら桃矢のぶんの飲み物を作り、カウンターに置いた。飲酒をすすめてはいない、勝手に飲むのはこちらのせいではない。という体裁である。
 スパークリングワインに市販のピーチネクターとシロップを少々、ベリーニだ。
 さらに自分用に一杯作る。ミントの葉と氷がたっぷり入ったロングタイプのグラスから柑橘系の爽やかな香がただよう。ラム酒をライムジュースとソーダ水で割り、シロップを入れたモヒートだ。

「フローズンダイキリにベリーニにモヒート……。ヘミングウェイの愛したカクテルだ。こいつらを飲んで、ヘミングウェイのような文才を身につけたいものだなぁ」
「え〜、でもさぁ。『李白は酒飲みだが、酒飲みがみんな李白とはかぎらない』て、秋芳が前に言ってたよ。じゃあ無理じゃない?」
「なぁに、最初は見た目や形から入るのもありさ。似ているものは同じ性質を持つ。厭魅や厭勝の基本原理だ」

 厭魅・厭勝。共感と類似という二つの基本原則に則った呪術だ。
 かつて一つだったものはいつまでも目に見えないどこかでつながっており、たがいに影響をおよぼしあう。
 似ているものはよく似た力をもっている。
 丑の刻参りを例にあげる。人形は人間に似ている。そこにもとは人間に生えていた髪の毛を埋め込む。人形は人間に似ているので、傷つければ人間と同じように痛みを感じ苦しみをおぼえる。そこに髪の毛を入れることによって人間とのつながりが生まれる。
 もともと人体の一部であった髪はまだもとの身体ともつながっており、髪を入れた人形を傷つければ髪の持ち主も傷つくというわけだ。
 このような考えは類感呪術と呼ばれ、世界中に存在する。

「この呪術は見立てが重要だ、たとえば二つに割れた石や二枚貝の貝を触媒にして――」

 秋芳はもののついでにと厭魅についての講釈をしだし、桃矢はそれを真剣に聞いた。巫女クラスは陰陽師クラスほどには呪術に重きを置いたカリキュラムをしてはいないが、それでも呪術の授業はある。真面目な桃矢にとって興味深いことだった。

「――安倍晴明が葉っぱで蛙を押し潰した逸話は知っているな? 晴明が若い公家たちに『陰陽術で人を
殺せるか?』と問われ、『殺せることは殺せるが、生き返らせることはむずかしいのでそんな術は使いたくない』と答えたら、『できないからそのようなことを言う』『できるのなら庭にいる蛙を呪殺してみよ』という流れになった。しかたなしに術を使ったのだが、その術というのが草の葉をつみ取って呪文を唱えてカエルにむかって投げるとカエルは葉っぱに押し潰されて死んでしまった。というのだ。霊力や呪力を込めることで物体を強化することはできる。だが――」

 秋芳は紙にペンで字を書いて説明した。

「葉≠ヘ破≠ノ通じる。
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