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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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獣の鳴き声のような音を発し、異形の月がうごめいた。
金色に輝く月面の中央に血のような赤い点が浮かび上がる。そこから触手が枝分かれしながら伸びだして全体を覆い、血走った瞳のごとき姿に変容した。
触手は蛇の大群のごとくうねり、のたくり太くふくれながら、毒々しい粘液をしたたらせ、秋芳に襲いかかった。
血の色をした無数の肉鞭が殺到するがしかし、秋芳はそちらを一瞥すると池に視線を落とす。鏡のごとく澄み、波紋ひとつ生じていないそこには青白い満月が映っていた。
もはや怪物と化した妖月のほかには、中天に輝くものはないというのに。
「疾ッ!」
池を目がけて気合とともに刀印を振るう。
キィンッ、ぎゃんっ!
なにかが割れるような金属的な音と獣じみた鳴き声が重なり響く。
次の瞬間、秋芳を襲おうとした妖月は消え失せ、あたりの景色も一変した。
銀色の月光にあふれた神秘的な光景はなくなり、銀光に満ちた堂宇のあった場所には黒ずんだ壁に簡素なこけら葺きの屋根をした、詫びた風情の建物がうずくまっていた。
一階は書院造り、二階は禅堂。
秋芳はこの建物を知っていた。観光地として有名な寺院、東山慈照寺。俗にいう銀閣寺だった。
「あ、いたたた……」
白い砂の敷き詰められた枯山水の上に一匹の獣が煌めく破片にまみれ、ラグをまといながら痛みに悶えている。
大きめの犬くらいのサイズだが胴体のラインは犬よりもふっくらとして愛らしいといえなくもない、人によってはモフモフしたくなるだろう。
毛皮は明るい茶色をしていて、体長の半分近くを占めているのはしゃもじの形をしたひらたい尻尾だ。頭は大きくて丸く犬に少し似ているが鼻は短く耳も小さい。ガラス玉のような目の周りだけ毛が黒く、濃いアイラインを引いているように見えた。
狸だ。
ただし本物の狸ではなく、絵物語に出てくるようなデフォルメされた姿形をしている、化け狸だった。
「おっかしいなぁ、ボクの幻術は完璧で穏形も完全だったはずなのに、なんで見破られちゃったのかなぁ……」
「幻術や隠形に完璧だの完全だのってのはない。あるのは彼我の実力差のみだ。俺の見鬼がおまえの目くらましを上回っていた、ただそれだけのことだ。だいたいなにを指して完璧だと言ってるんだ?」
「幻術で作ったお化け月に襲わせると同時に幻術の池に隠れてたボクが攻撃する。上に注意がむけられてるから成功すると思ったのに……」
「なるほど、月面に映ったあの寸劇は月に意識をむけさせるためのものか」
言いながら散乱する破片を手に取ってしげしげと見遣る。
「この鏡は、呪具だな。……雲外鏡か?」
「そうだよ。伝説の照骨鏡じゃないけど、幻を強化するすぐれ物だったんだ」
「月光に照らされ銀色に輝く堂宇のイリュージョンは
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