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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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女にありじゃ。これより十年先を教えようぞ。――霜月に管領細川殿の軍は河内で川野通春の軍と矛をまじえよう。あけて葉月、京と河内の一帯は大風雨や水害に見舞われ、地獄と化そう。そしてヨシマサは死ぬ。おぬしが将軍になる。だがそれに不服をおぼえたトミコめがおぬしの首を狙い乱を起こす。その時、帝は応仁と改号される。それが合図じゃ。ようおぼえておくがよい)
ギジンは鏡の中に見た。北は陸奥の国から南は薩摩の国までもが朱に染まる戦乱の世を。
戦乱の鏡影が消えると、かわりに能の怪士の面があらわれる。
(さぁさぁどうする。傾国の毒婦トミコをなんとする?)
青銅の鏡から昏く冷たい光が放たれる。月の光にしては明るく、影の色にしては暗すぎるそれが、じっとりとギジンの双眸に吸い込まれた。
「照骨鏡を御台様にもご上覧あそばしめるがよい。それと酒を持て」
ギジンは怒ったように腰元に命じ、大杯に注がれた酒を飲み始めた。
今度はトミコの目の前に銅鏡がまわされる。鏡をのぞき込んだトミコもまたあやしき鏡影を見た。
楽しげに笑う赤ん坊の姿。楽しげな男女の笑い声にわらべ歌が見え、聞こえた。
「な……、こ、これは……」
(トミコよ、トミコよ)
鏡面に幻影が浮かぶ。現在の彼女より数歳齢を重ねた姿の、けれどもまぎれもなくトミコ自身と見分けのつく女性の姿が浮かび上がる。その女は産着につつまれた赤子を抱いていた。
「そちは何者……」
(わらわは汝じゃ。ただし九代将軍ヨシヒサの母となったトミコなるぞ)
「九代将軍……。わらわが将軍を、産む……」
(いかにもそのとおり。今はまだ徴はないが、汝の胎にはやや子が宿っておる)
「やや子が!?」
小さく叫ぶとそっと気づかれぬように男二人を見やった。
「して、父御はだれじゃ? 御所様か、ギジン殿か?」
(おなごにとってそのようなことにどれだけの意味があろうか、大切なのは汝が将軍の正室であること。そして次期将軍となる子を身ごもっていることよ)
「たしかに、たしかにそうじゃ、な……」
そこで鏡影は能の大飛出の面に変じた。
(じゃがたった今、あの八代様はこともあろうに弟君に将軍の座をゆずり九代将軍にしようとしておる。正室たる汝になんの相談もせずにこのような宴の場で勝手に決めておしまいになられた!)
「そんな、ではこの子は、次期将軍になるはずのやや子は、ヨシヒサはどうなってしまうのです?」
(ああ、ああ、いつもそうじゃ。御所様はなにごとも汝に一言も相談をせずに勝手に決められる。そうして何十万貫もの銭を使い捨て、民百姓の憎しみはすべて汝が一身に浴びることになる。生まれてくるヨシヒサもどうなることやら……)
「……なんとしてもヨシヒサを次期将軍に、九代将軍にしてみせます」
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