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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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んでくるとか」
「しかとさようか!」
子どものように目を輝かせ、珍しき鏡の妙なる力を試そうと鏡を満月にかざしかけ、ふと手を止める。
「じゃが立川流といえばたしか後醍醐帝が深く傾倒あそばれし淫祀邪教ではなかったか? その教えの祖は仁寛。後醍醐帝が帰依されしは小野文観上人。この見蓮なる人物もたしかその創設に関わる者ではなかったか」
「邪教などとは今は昔のことでございましょう。そも、立川流があがめし荼枳尼天は夫婦円満、子宝の霊験あらたかだとか。今の御所様にはかっこうの護り本尊かと」
「ふむ、たしかに……」
すっと、鏡をのぞきこむ。
満月の光が青銅の鏡に吸い込まれ、虹の色彩を持つ
蛋白石
(
オパール
)
の輝きを放ったかと思うと、秋の青き空の色を見せる。
「おおう、見事じゃ。いや、この色の変わりようを見るだけでも未来を見るより価値があろうぞ」
「なにか、色のほかには見えませぬか?」
ギジンのその問いにはあせりがにじんでいた。そんな彼に陪席のトミコがじっとねばりつくような視線を送る。
「いや、なにも……。特には……」
鏡の中をじっと見つめる。するとやがて、青い光を放つ鏡の中に彼自身の顔が浮かんだ。
だがその顔は実際の彼自身の顔よりも端正で、より美しく聡明で凛々しく、『かくあるべし』と常日頃からみずからが考える、理想の己の容貌であった。
(ヨシマサ、ヨシマサ聞こえるか)
ヨシマサ。それは先ほどから御所様と呼ばれる男の名だ。
「ぬぬ、この声は……。いったいだれの声じゃ?」
(だれでもない、余は汝である)
美しく尊大な表情で鏡のヨシマサが応えた。
「なんと面妖な……」
(聞け、ヨシマサ。この照骨鏡をギジンが汝に献じたのはなぜだと思う?)
美貌の鏡影がゆらいで消えた。かわって現れたのはどこかの茶室で密会するギジンとトミコだった。ふたりはかたく抱き合って唇を吸い合っている。
「もうがまんならん、あの数寄かぶれの兄めを始末してくれる」
「いつもそのような……、お言葉ばかりではありませぬか」
「言葉だけではない。それがしが起てばともに戦おうとしてくれる大名は十や二十はいる。それがしには大義がある」
「大義がございますれば帝をお味方につけるもたやすいこと。なにも乱を起こすまでもございますまい」
「…………」
「わが家に伝わるお話でございますが、比叡山の宝物殿にはかの邪教立川流の呪具が数多く封印されておりますとやら。その一つを御所様に触れさせたなら毒や刀でもってしいするよりも、いとも易きことかと」
「それがしに呪具で兄上を暗殺せよと、そうもうされるのか……。よし、覚悟を決めようぞ――」
ギジンの顔に殺意が広がっていった。
そこにふたたび鏡の声が響くと、鏡
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