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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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へと転じさせた。
 いびつにかたよった霊気はある段階から瘴気へ変わり、濃厚な瘴気は血肉を宿して具現化した。
 青黒い肌に獣の顔と鳥の羽と嘴を持った無数の異形が、天狗の群れが姿をあらわす。規模こそ小さいが、これは小型の霊的災害。霊災だ。
 それも初期の霊災どころか、霊災が連鎖する百鬼夜行。フェーズ4に該当する。
 たった一体から、ふたたび百鬼の群れが生まれ、踊り出る。
 死なんと戦えば生き、生きんと戦えば必ず死するものなり。
 秋芳は無我夢中でおのれの力を、呪力をふり絞り、全身全霊をかたむけて戦った――。




 
 時間にすればわずか数分だが、木の幹を背にして眠ってしまったようだ。
 秋の夜風にくすぐられ、目を覚ました。
 ここはどこだろう? どこかの小山の頂にいるようだが……。
 松や杉の木の生い茂る山中から下りようとした、その時。林の中から堂宇がこつ然とあらわれた。
 ちょうど雲ひとつない夜空で、東の空のほうに大きな満月が皓々と光り、地上を照らしていた。その月光を浴びて堂宇全体が白銀に輝いていた。まるで月の光が銀箔と化して屋根の上から垂木の一本一本、窓や障子、壁から高欄、果ては庭の砂にいたるまで、すみずみに光がたゆたい銀のしずくが弾けているような錯覚をおぼえた。

「なんと美しい……!」
 
 秋芳は圧倒的な美しさに総毛立ち、ふらふらと吸い寄せられるように堂宇に近づいた。
 唐破風が前後についた造りの向唐門。これもまた銀色に輝いていたが、おどろいたことにその屋根には本物の銀箔が貼られているではないか。
 門をくぐり中に入ると石庭が広がり、月の光を反射して真っ白い砂が銀色に輝いていた。花園には竜胆を始めとする秋の花々が咲き誇り、蓮の花が浮いた大きな池は満月をくっきりと水面に映し、こちらもまた金色に輝いているようだ。
 そのような美しい庭園の奥に白銀の光を放ち、鎮座する堂宇が堂々とそびえ立っている。

「これは……、月の光が反射しているんじゃない。門と同じく瓦や壁に実際に銀箔が貼られてるじゃないか!」

 しばらくのあいだ周囲を眺望し、その美しさを堪能すると、池のほとりにある大きな石に手をついて座る。すっかりこの場の美≠ノ呑まれてしまったようだ。

「……大運山龍安寺のような石庭に鹿苑寺の金閣を銀にしたかのようなお堂。これほどの古刹名勝が京都にあっただろうか?」

 ひょっとしたら自分は隠れ里や桃源郷と呼ばれる異界にでも迷い込んでしまったのかもしれない。そう思い眼下の池を見れば、こちらもまた美しい。若竹色の水をなみなみとたたえた池の水面は大きな月が丸く映り、少しも揺れていない。
 まるで磨き上げた鏡をそっと池に浮かべたような、いや、池そのものが大きな鏡のようだった。
 こちらもまた、美しい
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