第百三十話 最後の花火その十一
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「確かに蒸し暑いけれどね」
「ベトナムの夏はこんなものじゃないから」
「タイの夏もね」
「常夏よ、しかもね」
「冬とか春とか秋って実感ないのよ」
熱帯にいるだけあってだ。
「もうね」
「そういうのがない位でね」
「それでね、もうね」
「七月とか八月はこんなものじゃないから」
途方もなく暑いというのだ、そしてだった。
そうした話をしてだ、僕達は遂にだった。
線香花火まで来た、三人で屈んで線香花火をしているとだ。ダオさんはそのちりちりと燃える花火を見ながら言った。
「儚いわね」
「そうよね」
ラブポーンさんも言う、やっぱり屈んで燃えている線香花火を見ながら。
「線香花火って」
「小さく燃えてね」
「静かにね」
「それで最後はぽたって落ちて」
「儚いわね」
「けれどね」
それでもとだ、ダオさんはラブポーンさんに話した。
「それだからこそね」
「最後にいいのよね」
ダオさんはしみじみとして言った。
「だからこそ」
「そうなのよね」
「というか線香花火ってね」
「この儚さがかえってね」
「いいわね、じゃあ」
こうしたことを話してだ、そのうえでだった。
線香花火をしていた、僕もそうしていたけれど暗がりの中の線香花火はダオさんの言う通りに儚くてそれでだった。
悲しい気持ちになってだ、そのダオさんとラブポーンさんに話した。
「もうすぐ終わるね」
「そうね」
「その線香花火もね」
二人も僕に話してくれた。
「それで終わったら」
「後片付けをしてね」
「そうしてね」
「その後は」
「お酒だけれど何かね」
線香花火を見ているとだ。
「線香花火の後だと」
「これが肴にならない?」
ラブポーンさんはその今にも落ちそうな花火を見つつ僕に言った。
「線香花火が」
「そうだよね」
「見ているだけでね」
「見ているとね」
「頭に残って」
脳裏、そこにだ。
「思い浮かべながら飲むとね」
「確かに肴になるね」
「そうよね」
「うん、ラブポーンさんの言う通りだよ」
実際にとだ、僕はラブポーンさんに答えた。
「これはいい肴になるね」
「そうよね」
「もっとも肴も用意しておくよ」
僕は少し笑ってだ、ラブポーンさんだけでなくダオさんにも話した。
「とはいっても軽いものだけれど」
「西瓜って言ってなかった?」
「そういえば言ってたような」
「西瓜も少し出すけれど」
けれどこれはだった、梅酒よりも印象的な日本の夏の風物詩だけれどだ。
「最後でいいかな」
「梅酒飲んだ後ね」
「その時になのね」
「うん、その時に食べよう」
酔い覚ましのお水代わりにだ、西瓜は水そのものなのでそれには丁度いいものだからだ。
「最後にね、おつまみは柿
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