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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 5
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隔攻撃だ。
 熱を察知してアラームが鳴ると同時にスプリンクラーが作動し、散水――。
 はしなかった。ノズルから放たれたのは水ではなく火炎、炎の飛沫があちらこちらで撒かれ、フロアー内を紅く染めあげる。

「なんじゃあこりゃあ!? ――オン・ヒラヒラ・ケン・ヒラケンノウ・ソワカ!」

 即座に印を結び火難除けの神である秋葉権現の真言を唱えて耐火につとめる。

「結界を力づくで破壊したことで新たな防御措置が作動したのか……」
『ちょっと秋芳君だいじょうぶ?』
「無問題」

 秋芳は一瞬にして火炎地獄の様相となったフロアーを駆け抜けて、エレベーターを目指して駆けた。





「さぁ、そうと決まればがんばらないとね」

 京子は決意を込めて操舵輪をにぎりしめ、前方に広がる霊穴を見すえる。赤々とした炎が燃えているのがわかった。
 穴の先はうつし世。出てすぐのところで火界咒が展開されているのだ。
 面舵いっぱい。船首が右をむき、霊脈の激流に逆らう。
 船。そう、船だ。京子は船を操縦していた。
 霊脈の中、いったいどこからこのような船を見つけたかというと、京子自身の意識からにほかならない。
 霊脈に流され、翻弄された京子は大海で溺れかけたかのような錯覚をおぼえた。
 この流れから逃れるにはどうしたら良いか? とっさに浮かんだのは船であった。流れに逆らい波濤にあらがう船をイメージし、霊力をふりしぼったところ、ほとばしる霊力が船の形をとったのだ。
 この世ならざる陰態じみた場所ならではの摩訶不思議か、京子の如来眼のなせる業か、とにかく裸一貫で流されるよりかは船の上のほうが心強い。
 京子が率いていた動的霊災たちも必死になって船にしがみつき、乗船した。百体を超えていた彼らも大半は流され、半数以下となっていた。
 そのうちの一体、夜の十二時以降に食事をさせたり、水をかけてはいけないような外見の生物が京子になにかをさし出した。
 ゼリービーンズのようだ。

「あら、くれるの?」
「もきゅー」

 船を出して乗せてくれたお礼のつもりだろうか。いたずらをされないかわりにさしだされた戦利品を、お菓子をくれるそうだ。

「ふふ、ありがとう」

 口にふくむと焦げたアスファルトのような風味が口内に満ちた。

「…………」

 眉間にしわをよせ、顔を歪ませる。
 肩に止まったカラスがなんの反応もしめさないのは秋芳本体のほうに意識を集中すべく自動操縦に切り替わっているからで、もし今の京子の表情を見たら、『君はしかめっ面もかわいいな。施夷光のようだ』などと軽口を叩いていただろう。施夷光というのは別名を西施という中国四大美人の一人で、彼女には胸が痛む持病があり、よく眉間にしわをよせて苦しんでいたそうだが、そのよう
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