シーホーク騒乱 1
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用水工事に取りかかっていたのだが、軽石地帯のために水を引いてもすべて吸い取られてしまい、完成できずにいた。
なにか良い案はないかと広く意見を求めたところ、秋芳がひとつの提案をした。
「ひとつ考えがある」
「なにかしら」
「コストを度外視してもいいなら、水を引く手段がないこともない」
「もったいぶらないで話しなさい」
「これはかの弘法大師空海が一ニ〇〇年前に唐の国より伝えた最新の治水技術で」
「一ニ〇〇年前なのに最新技術とか、おかしくなくて?」
「その名も『綿埋(わたうずめ)の水流し法」といい、軽石の部分に綿を貼り、底に敷き詰めることで水漏れを防ぐことができる」
「綿ですって!?」
半信半疑どころか一信九疑だったが念のために試してみるとたしかにした。
結果は秋芳の言うとおり、見事に成功。
このような方法はウェンディの知るどの文献にも書いてないし、聞いたこともない。
異世界云々は道化じみたホラ吹きでも妄想でもない、事実なのかもしれない。
「――それで、そこの名産の蜂蜜をお土産にくれたんですよ。他の人もよくおごってもらったりしているみたいで、太っ腹です〜」
「学費を貯めないといけないのに、よくそんな余裕がありますわね」
「ここのお仕事の他にも、街の人たちのお手伝いをしてやりくりしているそうで、そのお手当てを元手にシーホークの漁師さんから余った魚を安く買って干物にしてフェジテ近隣の村々で売りさばいたら、けっこうな利益になったそうです」
「たまに見かけなくなると思いましたら、そんなお小遣い稼ぎをしていましたの。器用な人ですこと」
如才ない働きぶりで従僕として大いに役に立っているが、それ以上に魔術師としての素養が気になり出していた。
あれからロクでなしだと思っていた非常勤講師のグレンが思いもよらなかった有意義勝かつ楽しい授業をはじめたことでそちらのほうに意識がむかい、ウェンディ自身すっかり失念していたが、オンミョウジという「異世界の魔術師」である秋芳がいかに特異な存在か、今さらながら気になってきた。
いちど学院で魔術の適性検査を受けさせて、その結果次第ではナーブレス家が出資して入学させてもかまわないだろう――。
「決めましたわ。来週にでも彼を学院に連れて行きましょう」
「まぁ、きっとアキヨシさんも喜びますよ。……あ、お嬢様。でもその前にシーホークで商工ギルドの寄り合いの件ですが……」
「ああ、そういえばそんなのもありましたわね。ちょうど授業が五日間休講になりますし、今回はわたくしも顔を出しますわ。ミーア、あなたも来なさい。ついで彼も、アキヨシも同行させましょう」
「わ〜い、楽しみですぅ」
「ぐおおぉぉぉおおッ! 遅刻、遅刻ぅッ!?」
学院へと続く街中で叫
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