シーホーク騒乱 1
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「はい。おっしゃる通りです、お嬢様」
スカイベリー。雲ひとつない青空に似た色合いと、高所にしか生えないことからその名のついたベリー種の果物。
人がそのまま食べるにはむいていないが、薬効があり、錬金術の材料にするほか、このように湯船に浮かべて利用することが多い。
「まだ新鮮ですわね。このあたりではグロスター山でしか採れないはずですけど」
「アキヨシさんが採ってきてくれました」
「ああ、そういえばルドウィン卿の狩りのお手伝いをするとか言っていましたわね」
「そのお仕事が終わったあとに、山で色々と採ってきたそうです」
「ふぅん、でも空も飛べないのにスカイベリーだなんてよく採取できましたわね」
「なんでもシュゲンドウの修行で山中をさんざん駆けずり回ったから、ヘキココウの心得があって平気だとかなんとか……」
「シュゲンドウにヘキココウ……。また、わたくしの知らない単語が出てきましたわね」
当初悪魔だと思っていた秋芳が普通の人間だとわかった後も、本人が言うように異世界から来たという話は信じられなかった。
それだけ遠い、辺境の地から召喚されてしまったことへの嫌味や皮肉で異世界などと称している。
最初はそう思っていた。
たが秋芳が語る物語の多くはウェンディのまったく知らないような話ばかりで、たまに語るむこうの世界についての話にも前後の内容に矛盾はなかった。
「ミーア。あなた彼、カモ・アキヨシについてどう思いますこと?」
「よく働いていますね〜、他の人ならめんどくさがってやりたがらないような遠くへの荷物運びも、『スカイリムやジルオールの冒険者みたいでこういうお使いクエストはきらいじゃない』とか、意味不明なこと言って引き受けてくれますし。人間的にも悪い人ではないと思いますよ。たまに――、ううん、よく変なことを口にするのは気味が悪いですけど。今日もいきなり『この世界の人は猿から進化してないのか』とか訊いてきて、びっくりしちゃいました」
「人が、お猿さんから……?」
いったいどこからそんな発想が出てきたのか検討もつかない。
「そんなわけないじゃないですかって答えたら、一八〇〇年代ならウォレスとダーウィンがどうのこうのとか、ミッシングリンクだとか、ぶつぶつ言ってました」
「…………」
このようにときおり意味不明な言動をとることはあっても、カモ・アキヨシという人物の立ち居振舞いに卑しいところはない。
貴族として高い教育を受けた自分とくらべても、遜色のない教養や知識を持っている。ウェンディはそう思えてならない。
頻繁に口にする未知の言葉の数々も、創作ではない現実味を感じる。この世界にはない語彙を豊富に持っていることを感じさせる。
少し前にも、こんなことがあった。
領内の農園開発のために
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