シーホーク騒乱 1
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国に最古からある魔術結社。魔術を極めるためならばなにをしても良い、どんな犠牲を 払ってもゆるされる、むしろそうするべきだ。
この世界を導くのは優れた人間、すなわち研究会に所属する魔術師であり、それ以外。特に魔術の使えない人間はすべて盲目の愚者であり、家畜。そのような思想に取りつかれた者たちの集団だ。
「天なる智慧に栄光あれ。魔術は偉大なり」
虚空にむかって腕を斜め上に突き出す独特の敬礼をしたカルサコフの腕には短剣に絡みつく蛇の紋が彫られていた。
ナーブレス邸にはウェンディ専用の浴室が存在する。
巷の大衆浴場よりも広く、普通にお湯を張る浴槽のほかにも水練用のプールや足湯用の浅いバスタブ、北方で主流の蒸し風呂やシャワーも完備してある。
「清き水よ・溢れ出で・満たせ」
ルーン語のコマンド・ワードを唱えれば水晶石から水が沸きだし。
「炎よ・熱くたぎる・炎熱と化せ」
炎晶石で熱し。
「冷たき氷よ・吹雪け・冷やせ」
熱すぎるようなら氷晶石で冷ましてほどよい湯加減に調整できる。
魔法に縁のない庶民が見たら大いにうらやむ、あるいは恐がることだろう。
「はぁ……、お嬢様のお肌、白くて綺麗できめが細かくて玉のようです」
スポンジでウェンディの身体を優しく丁寧にこすっているミーアが、主の肌の美しさにため息を漏らす。
「当然ですわ。でもミーア、あなたのお肌もモチモチしていて、美味しそうな肌触りですわよ」
ウェンディは自分の身体についた泡を両手ですくい、ミーアの身体になすりつけて愛撫する。
「ああ、ダメですよお嬢様。そんなに動いたら洗えません」
「手じゃなくてあなたの身体をスポンジにして洗いなさいまし★」
「くすぐったいです〜」
「にょほほほほ」
「ああ、お嬢様! 『にょほほ』は、『にょほほ』はいけません!」
ミーアはいま入浴用のメイド水着を着てウェンディにご奉仕している。
この水着はノワール男爵という文化と芸術を解する風流貴族が考案したもので、エプロンドレス+ワンピース水着というデザインをしている。フリルつきで紺と白の配色はひとめでメイド服を彷彿とさせると高評価を得た。ちなみにビキニタイプも存在する。
貴人はなにをするにも使用人まかせだが、魔術学院で集団行動をしているウェンディはまだ自分で動いているほうで、他の王族や貴族など、着替えや歯磨きすら使用人にさせている。
「今日のお風呂はいつもよりも彩り鮮やかですこと。……あら?」
身体を洗い終え、お湯に浸かろうとしたウェンディは薔薇の花びらや各種ハーブの浮かんだ湯船に、あまり目にしない果実が交ざっているのに気づく。
「これは、スカイベリーじゃありませんこと?」
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