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真田十勇士
巻ノ百十二 熊本その六

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「まずは熊本までな、そしてな」
「薩摩までえ」
「逃げよ」
「では、しかし島津家は」
 ここで幸村は薩摩を治める彼等の話をした。
「豊臣家に手に入れた多くの領地を取り上げられた」
「その恨みがか」
「あるのでは」
「いや、それがな」
「違うのですか」
「豊臣家は昔のこと、それに太閤様ご自身はな」
 秀吉についてはというのだ。
「お嫌いではない」
「だからですか」
「右大臣様もな」
「敗れた時は」
「匿って頂ける、あそこに入ればな」 
 島津家の領地にというのだ。
「幕府もわからぬ」
「薩摩に入るのは容易ではないとか」
「伊賀者、甲賀者の手練れでもな」
 そうした者達でもというのだ。
「入っても生きては帰られぬ」
「そこまでの場所だからこそ」
「それでじゃ」
 その薩摩だからだというのだ。
「あそこに逃れられればな」
「右大臣様も」
「安心出来る」
「若し敗れても」
「そうじゃ、熊本にまで逃れるかはな」
「それはですな」
「もうわしの頭の中にある」
 それも既にというのだ。
「船じゃ」
「真田の忍道ではなく」
「あの道は忍道じゃな」
「右大臣様ではですな」
「忍だから通られる道」
「ましてや右大臣様はあまり歩いてもおられませんな」
「うむ」
 長い間大坂から出たこともない、武道の鍛錬も茶々がさせずそのこともあって大層肥満しているのだ。
「その様な方ではな」
「真田の忍道は無理ですか」
「だからじゃ」
「船で、ですな」
「いざという時に大坂に船を用意してじゃ」
「そしてその船で」
「敵が大坂におる間にじゃ」 
 そしてそこに敵の目が集中している間にというのだ。
「海に出てな」
「瀬戸内からですな」
「熊本まで行くのじゃ、船の手配もじゃ」
「加藤家にお願いし」
「そして逃れてな」
 その熊本城までだ。
「そこからじゃ」
「薩摩に入り」
「右大臣様をお救いせよ」
「わかり申した、そしてその話を」
「お主がせよ、いいな」
「畏まりました、ではこれより」
「行って参れ、わしはな」
 昌幸はというと。
「お主が帰るまではな」
「お身体も」
「もつわ」 
 そうだというのだ。
「だからじゃ」
「はい、それでは」
「話をまとめてくるのじゃ」
「それでは」
 こう話してだ、そしてだった。
 幸村はすぐに十勇士達を連れてそのうえで熊本にむかった。そして九度山を経った時にだ。
 ふとだ、幸村はこんなことを言った。
「近頃伊賀者も甲賀者もおらんな」
「ですな、特に十二神将は」
「一人もおりませんな」
「九度山への見張りもです」
「随分と減っております」
「どうやらな」
 ここで幸村は十勇士達にこう言った。
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