第六幕その五
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「神に感謝しています」
「では、です」
「では?」
「この海にまた行かれたいのなら」
それならというのです。
「お話して下さい」
「そしてですね」
「はい、ご一緒に」
こうお誘いをかけるのでした。
「そうされて下さい」
「わかりました、それでは」
「その時は」
「二人でお願いします」
「私達だけで」
「どういう訳かわからないですが」
実際に何一つわかっていない先生です、本当にこうしたことには極端に鈍くて自己認識も全く出来ていません。
「皆に言われまして」
「トミー君と王子に、それに」
「はい、動物の皆にも言われまして」
家族か家族も同然の親しい人達にです。
「ですから」
「皆さんに感謝しないといけないですね」
日笠さんは実際に心から感謝して言いました。
「本当に」
「とにかく皆行ってきまして」
「それで、ですね」
「そうしないといけない様なので」
それがどうしてかはわかりませんが。
「では」
「はい、それでは」
「ご一緒に」
またこの須磨の海に来る時はというのです。
「そうしましょう」
「それでは」
「では今はです」
「はい、この海をですね」
「観ましょう」
二人でというのです。
「このまま」
「それでは」
二人で笑顔でお話をしてでした、静かで清らかな春の海を観るのでした。そうしてお昼になるとです。
王子がお弁当を出してくれました、そのお弁当はといいますと。
「重箱?」
「これにしたんだ」
こう先生に答えます、見れば。
それぞれの段にお握りやおかずが整然と並べて入れられています、先生はそのお弁当を見て言いました。
「これは豪勢だね」
「シェフに作ってもらったんだ」
王子もこう応えます。
「皆で食べる為にね」
「そうなんだね」
「和風でね」
「うん、お握りに」
米俵型で海苔に包まれています。
「それにおかずもね」
「から揚げに海老フライ、たまご焼き、ほうれん草のお浸しにプチトマトに蒟蒻の煮付けにね」
それにでした。
「デザートは苺やオレンジ、バナナだよ」
「それも段に入れてるね」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「これは僕とトミーと動物の皆の分でね」
先生ににこりと笑って言うのでした。
「先生はね」
「僕は?」
「あの」
ここで日笠さんが先生に声をかけてきました。
「お弁当でしたら」
「まさか」
「はい、先生の分も作ってきました」
日笠さんがというのです。
「そうしてきました」
「それじゃあ」
「はい、宜しければ」
先生におずおずと言います。
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