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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 2
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もっと作って、欧米の、人類普遍の真理に目覚めるように啓蒙していきましょう」
「ははーっ、よろこんで!」

 男が平伏せんばかりに頭を下げた時、激しい揺れが船を襲った。

「な、なにごとですか!?」

 ふたたび衝撃が船体をつらぬく。一度や二度ではない、短い間隔で断続的に衝撃が走り、船体がきしみをあげる。

「津波? 地震? 原発事故!? まったくこれだから極西の島国は……」

 船上に設置してあるサーチライトが一方を照射すると、巨大な魚影が見えた。
 飛沫をあげて船体に体当たりを繰り返す大きなクジラの姿が確認された

「なんですかアレは!? なんで東京湾にクジラがいるの!?」
「迷いクジラでしょうか?」

 SPの一人が律儀に応える。

「射殺なさい! このままでは船が破壊されてしまいます」
「え? で、ですがこの船には銛も機銃もありません。それにクジラを傷つけるのは野蛮な行為かと」
「野蛮というのはアメリカ人に対してアメリカ人以外が暴力をふるう行為を指すのです。そしてあなたも私もアメリカ人です。このような蛮行はけっしてゆるされません。この現状を見なさい、あのクジラそのものが大量破壊兵器のような脅威をもって私たちを脅かしています。殺してもかまいません」
「いや、ですから殺傷する装備はこの船にはないのです」
「それでもアメリカ男子ですか、情けない!」
「素手で立ち向かえと?」
「素手とは言いません。消防手斧があるでしょう」
「手斧でクジラに立ち向かえと?」
「そうです、エイハブ船長を見習いなさい。そもそも私たちアメリカ人はやつらを狩る側の人間であり、刈られる側ではないのです」

 開拓時代に産業らしい産業のなかったアメリカは東岸近海に大量にいたセミクジラやマッコウクジラなどを獲って、油を売ることが重要な産業の一つだった。
 石油が発見され、その精製技術が向上するまではロウソクを作るのに植物油も利用されていたが、クジラの油を使ったロウソクは炎が美しいうえに本体が真っ白に仕上がったので非常に人気があったそうだ。
 獲りすぎて近海にクジラがいなくなると、もっと遠くに行き。それでもいなくなると、さらに遠くの海まで行って、とうとう鎖国していた日本にまでたどり着いたというわけだ。
 アメリカが日本との国交を欲したのは日本近海の海域にマッコウクジラの大群が発見されたため、日本本土に捕鯨船のための母港が必要だったからだ。
 他国に迷惑かけず鎖国していた平和な日本を武力で脅し、強引に開国させたというわけである。
 それだけ当時のアメリカにとってはクジラの油は重要な外貨獲得手段であり、その外貨は近代産業勃興の起爆剤となった。
 アメリカの捕鯨最盛期には七百隻もの捕鯨船があったそうだ。
 それだけ乱獲すればクジ
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