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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 2
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名度の低い霊視官だが、祓魔局にとっては欠かすことのできない人員といえた。
「ぐぬぬ……」
「そうテンパりなさんな、大春日」
あわただしい中、低めのバリトン・ボイスが響く。声の主はと大春日が振り返ると、そこには彫の深い顔立ちと口髭が舞台役者を彷彿とさせる中年男性が立っていた。
「宮地室長……」
宮地磐夫。祓魔局修祓司令室室長にして独立祓魔官。国家一級陰陽師。当代最強の陰陽師と謳われる、十二神将の一人だ。
「俺たちは俺たちの仕事をする。ただそれだけだ、どんな時でも変わらずにな」
「しかし、この状況は異常です。祓魔官の数が追いつけません」
「そのことだが、今夜の霊災は数が多いだけでなく、ちょいと妙な動きをしているみたいなんだ」
「と、言いますと?」
「現場にむかった祓魔官や霊視官からの報告によると、やつら街中で暴れるだけ暴れたらドロンしちまうそうだ。こんなことは今までちょっと例がない」
「たしかに、妙ですね」
「その暴れかたもなんというか特殊でな、子どもの悪戯。というにはちょいと性質が悪いが、死者がでるような類のものじゃない。今のところは」
「どういうことでしょう?」
「さてな、あいつらもハロウィンを祝いたいんじゃないか」
「ご冗談を……」
「実際やってることはハロウィンで悪ノリしてる若者レベルなんだよな。まぁ、それはおいといて、注目すべきは祓魔官が現場に到着したら消えちまう点だ。おそらく霊脈に潜み込んでいるんだろう」
「それでは、まるで禹歩ですね」
「そして次の場所に移動する」
「……はっ! ということは、同じ個体が複数の場所に出現していると?」
「そういうことになるかな、図面上は真っ赤だが出現している動的霊災の数はここまで多くはない。……はずだ」
それでも百鬼夜行と呼ぶにふさわしい数の霊災が都内を中心にあふれているのだが、あえて口にはしない宮地だった。
「霊脈を使っての移動はやっかいだが、それを逆に利用する手もある。流れを制御して一か所に集め、一気に修祓するプランを検討中だ。現場の祓魔官たちに一時待機を伝えてくれ」
「はい、ただちに!」
落ち着きを取り戻した大春日が指示を出し始めるのを確認した宮路はそっと部屋のすみにさがり、軽く腕組みして壁によりかかる。
今回の作戦。公式には霊災修祓となってはいるが、実際には数多の動的霊災の討伐、つまりは調伏だ。それも陰陽の均衡を重んじる修祓ではなく魔を降す一方的な調伏になるだろう。
可動護摩壇の投入にくわえ、かってない規模の調伏作戦になるはずだ。
十二神将たる自分も現場に出ることになるだろう。
「やれやれ、ひさしぶりに本気を出すことになりそうだな……」
宮地の顔にわずかに浮かんだ苦笑は、髭に隠されて見えなかった。
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