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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 2
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女の姿に思わず後ずさる駐日大使。だがその時甲板上に黒い穴が開いて、京子たちをはじめ百鬼夜行を吸い込み始めた。

「あら、時間ね。これでかんべんしてあげるわ」

 京子は油性ペンで駐日大使のひたいに手早く落書きする。

「じゃあね、駐日大使さん」
「地震と霊災が多い国に失望したらいつでも帰国してもいいんだぜ」
こうして霊災プラス一人の人間という嵐がすぎ去ったあと、ひたいに『米』と書かれた駐日大使はしばらくその場に立ちすくんでいた。





 ふたたび異界。
 暗灰色の世界を異形の群れとともにそぞろ歩く。
 山も林も海も川も、建造物のない空間ではどのくらい歩いたのか、時間の感覚もおかしくなる。

「ここも景色にもっと変化があれば楽しめるんだけどなぁ」
「そうね。でもその代わり周りの連中が変化に富んでるじゃない」
「たしかに」

 ハロウィンという特別な夜に生じた霊災だからか、鬼や天狗、鵺や野槌、牛鬼といった比較的目にしやすい和風の造形をした動的霊災ではなく、洋風の動的霊災が目立つ。
 先頭で元気にはしゃいでいる小鬼たちはゴブリンだろうか、仲良く寄り添って歩いているランタンを持ったカボチャ頭と雪だるまはアイルランドやイングランドの伝承に伝わるジャックランタンとジャックフロストだろう。たまにランタンにぶつかって雪だるまが溶けている。鼻歌も美しい鳥乙女はセイレーンかも知れない。
 映画に登場する怪物の姿をしたものもいた。あの赤い巨大な果実は有名なキラートマトだろう。

「……て、なじんでる場合じゃないわ。つい一緒になってはしゃいじゃったけど、あたしたち霊災に、百鬼夜行に取り込まれちゃったのよ!? どうするのよ!」
「ああ、そのことなんだが……。おそらくこの霊災は、そうこれは『ハロウィン』という名の霊災だ。ハロウィンという一つの巨大な霊災を中心にして無数の霊災が連鎖的に発生し、霊的存在が実体化して暴れ回る。まさに百鬼夜行なわけだが、こいつは明日の夜明けとともに自然消滅して、俺たちも解放されるんじゃないかと予想している」
「……あくまで万聖節の前夜限定の霊災ってわけ? その予想通りならいいんだけど」
「いざとなればうつし世に出た時に一気に修祓するか、強引に結界を破ればいい。今の君なら、如来眼の力を使えばどちらも可能だろう」
「たしかに、そんな感じがするわ。でもなるべくなら力ずくの解決は避けたいわね。作法があるのならその作法に則ったやりかたで修祓したいわ」

 天神を祀り地祇を祠り、荒ぶる怨霊を慰撫し、鎮魂を司るのが日本の信仰・呪術の原点だ。京子はそのことを言っている。

「京子、君は星読み。一種の巫女だ。そしてハロウィンは祭祀。君がこの百鬼夜行に巻き込まれたのはたんなる偶然ではないような気がする。こいつ
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