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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 2
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十一月一日。万聖節、あるいは諸聖人の日。
カトリック教会の祝日の一つで、すべての聖人と殉教者を祝う日。
この日の前日はハロウ・イブと呼ばれる、キリスト教伝来以前からの神々や精霊たちを祭る、アイルランドやケルトの人々の祝祭日でもあった。
そして十月三十一日は古代のアイルランドやケルト人にとっての年末であり、この日は秋の収穫を祝い。先祖の霊が帰ってくる、日本のお盆のような日なのだが、それと共に人に害をなす悪霊や魔物もおとずれるため、そのような魔物に魂を奪われぬように人々は同じ魔物の格好をして彼らの目をあざむき、難を逃れたという。
こんにちのハロウィンの原型である。
これは一種の穏形であり、呪術的な行事といえた。
骨格標本のような骸骨人間が自分の頭蓋骨をはずして空高く放り投げる。
『Trick or Treat!』
空中でガチガチと歯を鳴らしてお決まりのフレーズを口にする。
「ああいうふうに子どもたちが家々を周って菓子をねだるのは、祭り用の食料をもらって歩いた農民の姿を真似たもので、中世の名残なんだってな」
黒い三角帽子とコート、ミニスカートからは黒と白のストライプ模様のハイタイツの脚がのび、ヒランヤつきチョーカーを身につけたGOTHい魔女っ娘の肩にとまったカラスがそんなうんちくを披露する。
「へぇ、そうなんだ。…て、そんなこと言ってる場合じゃない! あたしたち百鬼夜行に巻き込まれちゃったのよっ、これからどうするのよ!」
魔女っ娘が怒鳴る。
「さて、どうしたものか……」
魔女っ娘は京子、その肩にとまるカラスは秋芳の式神だ。
あの後――。
ウクライナの愛のトンネルを模した緑の小路内に出現し、異形の群れを吐き出した黒い穴はいつの間にかなくなり、かわりに反対側に新しい黒い穴が出現した。
新たに開いた黒い穴に異形の群れは吸い込まれるように殺到し、中へと入っていったのだが、場所が悪かった。いかんせん狭い一本道である。通勤ラッシュさながらの群等に押し合いへし合いされて、京子と秋芳も異形の群れと一緒に黒い穴に吸い込まれてしまったのだ。
動的霊災ならば幾度となく見てきた京子たちだったが、このような奇怪な現象は今まで見たことも聞いたこともない。
思わず圧倒され、なんらかの呪術を使って押しとどめることも避けることもできずに飲み込まれてしまったのだ。
あたりは不思議な闇につつまれていた。
闇といっても真っ暗ではない。いったいどこに光源があるのか、ほのかに明るい。この世ともあの世ともつかない異界。暑くもなく寒くもない、摩訶不思議な空間。
そのような場所で数十体の魔物に囲まれ、歩を進めているのだ。
「……なぁ、京子。たしか十月末日は夜行日だったよな?」
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