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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
ロクでなし魔術講師、買収される
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ていくぶんには見ることも触れることもない代物だ。

(なるほど、この世界ではまだ一部の人間による技術や知識の独占がおこなわれているわけか)

 古代から中世まで、民衆は支配者層によって意図的に文盲状態のままにされ、いいように支配されてきた。
 貴族や聖職者などの特権階級層が権力と支配を存続させるために、自分たちだけが高い教育を受け、最新の技術や知識を独占してきた。
 自分たちだけが優秀であるために。

(だが長い目で見れば技術も知識もより多くの人々に開放し、みんなで共有して高めていったほうが国家の益になる。さらに大局的な視野で見れば人類全体の利益になる。独占して野中の一本杉として栄えるより、大きな森となって発展したほうが良い)

「あ〜、そういやあったわ。魔術が軍人や一般人問わずに貢献している、魔術がすっげえ役に立っている分野が」
「それはどんな分野です?」
「人殺しさ」

 軽薄な笑みが酷薄な冷笑に変わった。

「魔術ほど人殺しに優れた術は他にないんだぜ、異世界人さん。剣術がひとり殺している間に魔術は何十人も殺せる。戦術で統制された一個師団を魔導士の一個小隊は戦術ごと焼き尽くす。どうだい、役に立っていると思わないか? このアルザーノ帝国は魔導大国なんて呼ばれていて、帝国宮廷魔導士団なんていう物騒な連中に毎年、莫大な国家予算がつぎ込まれている。これがどういう意味かわかるよな? 少し前に起きた戦争じゃ多くの若者が――いや、年寄りも女も子どもも魔術の犠牲になった。平和な今の時代でさえ魔術を使ったおぞましい凶悪犯罪が後を絶たない。今も昔も魔術と人殺しは切っても切れない腐れ縁だ。魔術ってのは人を殺すことで進化・発展してきたロクでもない技術だからな!」

(うわぁ、なにこの人。自衛隊と陰陽師は人殺し集団とか言っちゃう系?)

 グレンのあまりの極論にドン引きする秋芳。
 先の戦争の遺産である陰陽術に対する世間の風当たりは強く、呪術関係者はよく糾弾される。
 特に偏った思想の人々からは目の敵にされ、なにかにつけて難癖をつけられ、批難をあびせられ、心底辟易しているのだ。
 だが内心の動揺をさとられまいと、つとめて冷静に返す。

「ものごとには必ず陰と陽、ふたつの側面があります。あなたが先ほど言った数々の技術にも、良い部分と悪い部分があります。医術は薬とともに毒も生み出し、冶金技術の発達で生み出された鉄は青銅器や石器以上に人を殺傷しました。農耕技術の進歩には自然破壊の一面があり、建築術により築かれた城塞は戦争を長引かせ、より多くの兵士たちの命を奪ったことでしょう。優れた鍛冶屋はヒゲソリを打たず刀剣を打ち、秀でた大工は長屋を建てず砦を築きます。悲しいかな技術の最先端とは得てして戦いのなかにあるもの。だからといって戦争が必要悪だ
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