ロクでなし魔術講師、買収される
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の異能者でなければ行使することはできない。
魔術と異能。そのどちらにも縁のない一般人から見ればどちらもおなじ『不思議な力』だが、アルザーノ帝国では悪魔の力だと忌み嫌われている。
魔術は畏怖の対象であり、異能は嫌悪の対象なのだ。前者は強固な社会的地位を確立する後ろ盾となりえるが、後者は差別と迫害の対象なのだ。
辺境の精霊信仰や土着信仰において、異能者は信仰や崇拝の対象になることもあるが、ここアルザーノの文化圏において、それは禁忌の力以外のなんでもない。
「ご忠告感謝します。しかしよそ者の俺がこの国の風潮に物申すのもなんですが、異能も魔術も似たようなものなのにおかしな話ですね」
「あんたは、そういうふうに考えるのか」
「どちらも便利な力なのに、いっぽうを尊び、いっぽうを蔑むなんてアホらしいですね」
「その考えは、この国では異端だな」
異能のなかには現代の魔術では再現できない様々な効果を持つものが多い。
そのため自身ではけっして持ちえない卓越した力に対する羨望や嫉妬のため、異能嫌いの魔術師は少なくない。
「よそ者の放言ですが……、学究の徒たる魔術師とは思えない反応ですね。未知なるものや脅威に対しては拒絶や排除ではなく、分析と理解によってみずからの力として取り込む。それこそが知恵というもの。賢者たる魔術師の取るべき行動でしょうに」
「あ〜、おまえさんがオンミョウジとかいう、むこうの魔術師(俺ら)だって、なんとなく納得だわ」
秋芳の感想はグレンの知る魔術師のなかでも学者肌の連中の好みそうな考え、発言だった。
「だが魔術が便利って考えにゃ、諸手を挙げて賛成はできないな」
「なぜです」
「便利ってのは人の役に立ってはじめて便利っていうもんだろ、魔術は役に立たないから便利とは言えない。なぁ、たとえば医術は病から人を救うよな? 冶金技術は人に鉄をもたらした。農耕技術がなけりゃ人は飢えて死んでいただろうし、建築技術のおかげで人は快適に暮らせる。この世界で術と名づけられたものは大抵人の役に立つが、魔術だけは人の役に立たない」
魔術を使うことができ、魔術の恩恵を受けられるのは魔術師だけだ。魔術師でない者は魔術を使えないし、魔術の恩恵は受けられない。だから魔術は人の、人々の役に立てないと、グレンはそう言っている。
「いや、単純に考えて白魔術とか錬金術とか、むっちゃ医療に貢献しそうなんですが」
「ああ、貢献してるぜ。あくまで帝国軍内、魔術師たちの間だけでな。魔術の恩恵が一般人に還元することはない」
魔導大国であるアルザーノ帝国では魔術=軍事技術。国家機密であり、その研究成果が一般国民に還元されることを頑として妨げている。そのため今でも魔術は多くの人々にとっては不気味で恐ろしい悪魔の力であり、普通に生き
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