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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
ロクでなし魔術講師、買収される
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胃袋を刺激する。
 グレンはつけあわせの野菜スティックでチーズをからめとり口にした。

「まぁ、とにかく飯だ、飯。こまかい話は食ってからな」



 豚肉の腸詰め、牛のキドニーパイ、鴨肉のロースト、鮭の香草焼き、兎とキャベツのスープ。ライ麦パン 、野菜の盛り合わせ、揚げ芋――。
 テーブルの上に広がる料理を葡萄酒で流し込むように食べる。グレンは痩せの大食いというやつで、ほとんどひとりでたいらげていく。

「――というわけでナーブレス家のお世話になっているのですが、故郷に帰るため、そして後学のためにもぜひ魔術を習いたいのです。ですが学院に入るのも大変でして――」
「ふんもっぐ、うまうま。はん、そう。くびっぐびっ、ぷはぁー。もぐもぐ、んまんま」
「――お金と信頼は一朝一夕には得られません。日々の務めを果たしつつ独学でルーン言語をおぼえたのですが、その次の段階に進むのがむずかしくて――」
「ガプがぷガプがぷガッ、むしゃむしゃモグモググァツもりもり、グビグビ、ぷはぁーっ!」

 繰り返すがグレンは痩せの大食いである。よく食べること食べること……。
 秋芳のほうは料理にはほとんど手をつけず、ドライフルーツとラルゴ羊のチーズをつまみに蜂蜜酒で喉を湿らせつつ、自身の境遇の説明を続ける。
 メインディッシュを胃袋に収め、食後のデザートをたのんで一息入れたところでようやくグレンは咀嚼音以外の言葉を口にした。

「……いや〜、アキヨシさんだっけ。あんたが嘘をついているようには思えないし、頭がイカれているようにも見えないけどさぁ。けど正直、異世界云々て話は信じられないんだよなぁ」
「では呪術を、むこうの世界の力を見せましょう」

 全身の気を巡らし、もうひとりの自分をイメージする。すると秋芳の身体から魂魄が抜け出し、かりそめの肉体を生成した。
 出神の法だ。
 半透明の秋芳の魂魄体がテーブルの上のボトルを手に取りグレンのグラスに酒を注ぐ。

「レイス・フォーム……! それも無詠唱で……、しかも物をつかめる、だと!?」
「「ああ、やはり似たような魔術が存在しましたか」」

 周りに気づかれて騒ぎになる前に魂魄を引っ込める。

「どうもこの世界に存在する魔術と似たような効果を発揮する呪術は多少なりとも再現できるようなのですが、それでもできるものとできないものがあり、実にもどかしい限りです」
「……いまみたいなの、人前で使わないほうがいいぜ。魔術どころか異能≠セと認識されて追われることになる」

 異能。
 ごくまれに人が先天的に持って生まれる特殊な超能力。それを指す言葉。
 魔術に依らない特殊な能力で、それを持つ者を異能者と呼ぶ。
 基本的に学べばだれでもあつかえるようになる魔術とは異なり、異能は生まれついて
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