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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 1
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「つくづく便利よねぇ呪術って」
「ああ、便利だ。こんな便利な代物、霊災修祓だけに使えだなんてもったいないよな」

 陰陽法によって様々な制約が敷かれており、例外は多々あるが、基本的に霊災の修祓でのみ呪術は使用してもよいとされている。もっともこれに不満をおぼえる陰陽師は多い。そのため現在の陰陽庁は陰陽法の改正。規制緩和を強く進めている。
 その急先鋒が京子の父である倉橋源司その人だった。

「あなたも陰陽法の改革に賛成派なのよね」
「現行法の改正にはね、今の呪術を縛る法律はあまりにも窮屈だ。ただ改正にともなって陰陽庁の権威までもが拡大してしまうのは防ぎたい」

 呪術師の中には自分の特殊な才に溺れ、選民思想に取り憑かれる者も少なくない。官に属する陰陽師には特にそういった気質の者が多いように思える。
 秋芳は彼らの増長を懸念しているのだ。

「呪術の社会的な地位を向上させる方法は、やっぱりその便利さや面白さを人々にアピールする。てのが良いと思うんだよな。たとえば東京エターナルランドならぬ東京レイヴンズランドとか作って――」

 祓魔官は漆黒の装束を身にまとうことから、闇鴉(レイヴン)の異名でも呼ばれている。

「――呪術を使ったアトラクションとか、かわいい式神のマスコットキャラとか用意するんだ。ジェットコースターの代わりに竜に乗り、木馬ではなく雪風で空を駆ける。本物の百鬼夜行がいるお化け屋敷なんてスリル満点だろう。呪具をもちいれば一般人でも呪術の真似事ができるから、呪術の体験コーナーなんてのも面白そうだ」

 雪風とは土御門家に代々仕える白馬の式神のことだ。その蹄は大地ではなく天を駆ける。陰陽師で知らない者はいない。

「たしかに楽しそうね。あ、そうだ!」
「うん?」
「あのね、お祖母様って昔からクリスマスが大好きで、毎年陰陽塾でクリスマス・パーティーするんだけど、けっこう気合の入ったクリスマス・カラーを演出するのよ。簡易式でサンタさんやトナカイを作って空を飛ばしたり、水行符で雪を降らせてホワイトクリスマスを演出したりとか」
「ほほう! それは楽しそうだ」
「今年は塾舎を開放して、外部の人たちも招いてみるよう提案してみる。呪術でこんな面白いことができますよ。てアピールになると思うわ」
「それは良い考えだ。それにしてもクリスマス・パーティーか……」
「あ、やっぱり賀茂家じゃそういうのなかった?」
「なかったな。今日のハロウィンなんかもそうだが、欧米伝来のイベントは総じてスルーだった。俺がクリスマスに触れたのは大人になってからだ。笑狸と二人でターキーやブッシュ・ド・ノエルを食べ、『素晴らしき哉、人生!』を観て、プレゼント交換したものだ……」
「それ、なんだか仲睦まじくて幸せなのか、さびしいのか微妙なところね…
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